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「ま・く・ら」柳屋小三治著 講談社文庫1998年刊 695円(税別)
旅にある間じゅうは、知人の親切でお借りしている、佐伯泰英の「密命シリーズ」を堪能していたが、日本に帰ってきてさすがに、少し他のものを、と手を伸ばしたのがこの本。何かの拍子に妹が「面白い本があると、教えてくれたので早速買ったが、書棚においておいたものだ。
「まくら」といっても眠る時に頭の下にあてがう、例のものではない。安眠枕とか、形状記憶枕とか言うものの、評論では勿論ない。落語の前のイントロというか、お客とのコミュニケーションを取るための、小話集である。それが何と一冊の本になっている。寄席での録音を基にしたのだろうが、高座での話をそのまんま活字にしてある。小話と言うより、中話、どうかすると大話になろうかという、これだけで一席終わってしまいそうな、ずいぶん長いものもある。
これがなかなかのものである。クスクス、とかウフフ、ニンマリなんてものではなく、ワッハッハ、ゲラゲラ、ガハハッと言う類のものである。小三治というのはさすがに多趣味だ。凝り性でもあり、向学心もあり、それが下町、庶民根性とうまくミックスしていて、何でもないようなことを面白く聴かせる。英語学校に通う話などは、我々のレベルに近いので理解しやすい。
話芸というのはこんなことをいうのだろう。これを実際に音声で聞けば、強弱、間、イントネーション、などで更に絶妙なものだろうと、容易に推測できる。抱腹絶倒の一歩手前までゆく、十分楽しませてくれる一冊であった。