相場英雄「ナンバー」双葉文庫 2012年6月刊
題名の「ナンバー」は警視庁捜査2課の1~6まで係が分かれていて、それぞれが手柄を競い合う競合関係にあるグループを指す。
この課は知能犯=横領、詐欺などを摘発するところで、ターゲットは予め目星はついている。それを行動確認と、帳簿の照応で犯行をあぶり出し、解明する。
主人公の新米刑事は始めの2,3件はいずれも犯人にいいように踊らされるが、それを上回るベテラン捜査人に救われる。小説としてはそのあたりを匂わせながら確証を掴ませないさじ加減が絶妙である。また緻密でもある。そうして事件の捜査を経験しながら少しずつ成長してゆく。
果たして実際の警察でこんなにもきめ細かい配慮をしている警官や、刑事がいるのだろうか。初めから、ありそうではあるが、実際にはないだろうなと絶望している自分がいる。ただ、一方に組織内でライバル視をして、縄張りや手柄を競い合う組織は確実に存在しているのだろうと納得する。
そのあたりはよく描けた警察小説である。この著者はきっと面白い物語を書く著者だろうと期待できる。もちろんこの物語も十分面白い。