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まかて版井原西鶴

2018-08-12 03:22:53 | 


朝井まかて「阿蘭陀西鶴」講談社文庫 2014年刊

最近私が気に入っている作家朝井まかてが、あの井原西鶴を描いた作品。庶民派の西鶴が大阪に陣取って、俳諧の世界からスタート。まさに才覚のある西鶴はいろいろな趣向を尽くし、談林派の頭目目指して奮闘する。

それをこの小説は西鶴の盲目の娘から見た姿で描く。10代で母を失った娘「おあい」は母から厳しく仕込まれ料理、裁縫などの家事は殆んど自分ひとりで出来るようになっていた。少女期の常でそんな自分を何かと皆の前で持ち上げてくれる父西鶴を疎ましく思う。

西鶴が次第に俳諧から草紙作家へとシフトし、世の中で新しいジャンルを次々と切り開いてゆく。松尾芭蕉の俳諧に「気取りやがって」と敵愾心をむき出すかと思えば、自分のもとを訪れて同じ題材を浄瑠璃の世界に展開しようとする近松門左衛門に、鷹揚な応対をするなど、いかにも大阪庶民派の面目躍如の生き方である。

傍迷惑で手前勝手な父だと思っていた娘は「好色一代男」あたりから父への見方が少しずつ変わり、晩年は心を通じ合わせる。養子に出された弟たち家族との関係も修復される。

庶民の生活、版元とのやり取りや、情の描写に流されず俳諧、出版業界の事情などを的確に描く冷静なところがこの作家の魅力だろう。

大阪好きの私の心情にも沿う、この作家の次の作品が楽しみである。