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グラスを傾ける

 郷秋<Gauche>が愛読する神奈川新聞にこんな記事を見つけた。
 「思い出の一枚、募集」
 6月に50年にわたる歴史を閉じる横浜プリンスホテル(横浜市の中心部からはかなり離れた磯子区にある)のグランドフィナーレイベントの一つとして写真展「磯子と横浜プリンスホテルの歴史」が企画され、そこで展示する写真を公募しているのだという。

 ここではなぜ横浜プリンスを閉館しなければならないかについては、触れない。今日のポイントは閉館の理由ではなく、こんな写真を募集したいとして例示・掲載された写真についてである。その写真は、横浜プリンスホテルの迎賓館前で外国人宿泊客がビールのジョッキを「傾けている」1955年頃の写真なのである。

 問題は(郷秋<Gauche>的にはということだけれど)、その写真とキャプションにある。キャプションには「ビールのジョッキを傾ける外国人客ら」とある。が、しかし、その写真の外国人4人は、ビールのジョッキこそ手に持ち、胸の辺りまで掲げてはいるが、決して「傾けて」はいない。

 写真とそのキャプションとの間には、間違いなく隔たりがある。ビールのジョッキは傾けられていないのだ。にも係わらずキャプションには「傾けている」と書かれている。

 日本語初学者であれば、間違いなく疑問に思うことだろう。解りやすくするためにここでは「グラスを傾ける」としておこう。グラスを「傾ける」とは、器(グラスや杯)を傾けて中の酒などを飲むこと、なのだな。この「傾ける」の意味を知らなければ「傾けたら中身がこぼれるではないか」と言うことになるし、いったいグラスの中身は何なのだ、と言うことにもなる。グラスの中身はビール(酒)であり、傾けてこぼれそうになるビールを喉に流し込むのである。

 しかしだ、件の写真はジョッキこそ掲げているが、勿論傾けてはいないし、誰一人としてビールを飲んではいない。ジョッキを傾けると言うのはビール(酒)を飲むという意味にも係わらず誰一人としてビールを飲んではいない。う~ん、やっぱり日本語は難しいぞ。

今日の一枚は、我が家のアラカシの木の下で咲く二輪草。
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