画素数インフレ

 カシオから5月に1020万画素のコンパクトタイプのデジタルカメラ、 EXILIM ZOOM EX-Z1000が発売になった。売れているらしい。実売価格3万円台で1000万画素。デジタルカメラは画素数が多ければ多いほど高性能だとする「画素数数神話」が蔓延るいま、確かに売れることだろう。

 だがしかし、デジタルカメラの本当の性能は画素数で決まるわけではないと、郷秋<Gauche>は声を大きくして言いたい。確かに100万画素よりも200万、200万よりも300万画素の方が綺麗だ。でもそれもせいぜい600万画素くらいまでの話であり、それ以上の画素数があったとしても、多くのユーザーにとってはほとんど意味を持たない。

 600万画素あれば四つ切に伸ばしてもびくりともしなし。普通はまずそれ以上の大きさにプリントすることはないはずだ。だいたいたいがいの家庭にあるプリンターではA4(ほぼ六つ切りワイド)までしかプリントできない。

 1020万で撮ると、撮るものによっても違うけれど時に1枚が5MBほどのファイルになる。15,000円の1GBのSDカードだと200枚撮ったところでいっぱいになる。2週間の海外旅行のためには5枚くらいもって行かないと足らないかも知れない。家に帰ってきてからPCのHDに落とそうとするとそれだけで5GB、iPod用の音楽ファイルでいっぱいのPCにはもう写真のデータの入る余裕がないかも知れない。

 それじゃ、CD-Rに焼いておこうかと思っても、CD-Rの容量は700MBだ。1GBのSDカードいっぱいの写真のデータは1枚のCD-Rには入りきらないのだ。DVD-Rを使うしかない。ネットプリントしようと思っても1枚が5MB のデータを50枚も送ろうかとすると、ブロードバンドとは言えども嫌になるほどの時間がかかる。ほとんどがせいぜいL版程度でしかプリントしない写真のために1020万画素で撮ったりするとこんなに面倒なのだ。まったく意味がない。

 高画素数の撮像素子や大容量のメモリーカードが廉価に製造できるようになったものだからほとんど意味のない1020万のコンパクトタイプのデジタルカメラが登場したりする。でも、本当に良い写真のために必要なのは良いレンズであったり、一つひとつの画素の解像度であったり、撮影した影像をメモリに記録するための処理ソフトであったり、絞りやシャッタースピードを撮影者の意図で選べることであったりする。更に手振れしないための持ちやすい形であったり程ほどの重さであったりすることも重要だ。

 そういったことを考えもせずにただ高画素数(とディスプレイの大きさ)のみに走るメーカーって、「良いカメラ・良い写真」ということの本当の意味をわかっているんだろうかって、心配になるな。

今日の1枚は、昨日に引き続き紫陽花。
コメント ( 12 ) | Trackback (  )