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フィルムかデジタルか

 写真を通しての知人から面白い話を聞いた。
 知人(ここではAさんとしておこう)が1年程前に、数人の仲間とグループ展を開いた時に、見に来てくださった年配の写真愛好家の話しなのだが、と言って聞かせてくれたのはこんな話であった。

 その年配の写真愛好家(Bさん)が、永年共に写真を楽しんできた仲間の中から、それまでのフィルムを使うカメラから、デジタルに切り替える方が数人いて、デジタルに切り替えた方との間に溝のようなものが出来てしまい、グループの雰囲気が最近しっくりといっていないのだという。

 Bさんのグループは、中高年齢の方ばかりで、永年フィルムで撮影し、印画紙を使ってプリントする写真に慣れ親しんでいたので、デジタル方式の一眼レフカメラ(DSLR)が普及してきているのは知っていても、自分たちの仲間から、一人、二人、三人とDSLRに「転向」する人が出てくるとは、まさに晴天の霹靂であったようである。

 そればかりか、DSLR転向組みから、これまでのフィルムと印画紙で表現する写真は既に過去のものであること、デジタルよる写真表現の優位性に関する発言が多くなったことから、フィルムと印画紙による表現こそが写真の王道であると信じている方々と意見が合わなくなったらしい。

 ただ、面白いのは、BさんもDSLRにまったく興味が無いわけではなく、Aさんに、盛んにデジタルカメラによる写真表現について聞いてきたのだという。そこはそれ、親切かつメカに精通したAさんのこと、フィルムを使う写真とデジタル方式の写真の違いを事細かに説明したのだという。

 AさんがBさんにどんな説明をしたのかは、聞くまでもないのだが、その説明の後に、Bさんから驚きの言葉が発せられたのだという。
 「ところで、ここに展示してある写真の中で、DSLRで撮影した作品はどれですか」と。

 B氏は、フィルムと印画紙を使う写真こそが「本物」であり、デジタルは「邪道」と考えていたようであるが、実は、プリントされた作品を見て、どれがフィルムでどれがデジタルなのか、区別がつかなかったのである。

 確かに、最近のDSLRの画質は限りなくフィルムと印画紙に近づきつつあるから、特に、プリントがインクジェットではなく、印画紙に出力したものの場合には、それなりに写真に詳しい方でも判別できないこともある。その程に、デジタルの画質はフィルムと印画紙に近づいているのである。

 写真表現において、「デジタルは邪道」と考えてさえいたBさんが、フィルムによる写真とデジタルによる写真の違いが判らないというのはいったいどういうことなのか。それほどまでにデジタルがフィルムに近づいてきているということなのだが、2方式の違いが判らないなら、フィルムでもデジタルでも、どちらでも良いではないか、と郷秋<Gauche>は思うのである。

 先日、東北新幹線が青森まで伸張したとき、人は新幹線を取る、飛行機を取るかについて書いた(-->Click)。郷秋<Gauche>の結論は、当然のことであるが、どちらを選んでも3時間で青森に着けるのならば、その方の好きな方を選べばよい、郷秋<Gauche>ならば飛行機だけれど、というものであった。

 写真も然り。問題は、出来上がった作品で何を表現したいのか、何を訴えたいのかであって、フィルムで撮るか、デジタルで撮るかというプロセスではないはずなのである。そもそも、フィルムとデジタルは、二者択一、どちらか一方しか選べないのではなく、郷秋<Gauche>のように、撮らなければならない時にはデジタル、楽しみたい時にはフィルムというように「併用」だって、勿論できるわけなのである。フィルムとデジタル、どちらでも選べる今だからこそ、柔軟に、時と場合、その日の気分でどちらも楽しみたい、郷秋<Gauche>である。

三日目の今日は、山百合(やまゆり)。
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