どうするJ-Air、どうするCRJ

 昨日の日経に「日航、国内線で倍増 ―座席数半分の小型ジェット―」と云う記事。記事本文によれば、現在JALが運行しているMD81(JAL仕様163席)、MD90(同166席)に比し半分の座席数で「燃料の使用量も大幅に少ない」(記事のまま)エンブラエル社のE170(同76席、現在3機運行)を本年12月までに6機に増やし、MD81、90を退役させることで年間10億から20億円の収支改善効果を見込むとのことである(JALは2007年2月にE170を確定10機、オプション5機を発注しているが、いずれも子会社のJ-Airが運行する)から上記の記事はそのスケジュールを粛々と実行している事実を告げただけであった、取り立てて目新しいものではない)。

 どうやらJALは本気でMD81、90をE170にリプレイスしていくようだが、問題はJ-Airが現在が運行しているボンバルディアCRJ-200との関係、そしてYS-11以来の国策(国産)旅客機MRJ(70~96席)との関係である。

 一つ目の問題、ボンバルディアCRJ-200との関係は、同じクラスの旅客機であるボンバルディアとエンブラエルの2機種を導入し、今後もこの異なる機体のメンテナンスを続けていくのかと云うことである。現在J-Airが運行しているボンバルディアCRJ-200は50席とE170より小さいがCRJ-200の長胴型として70席のCRJ-700、90席のCRJ-900が存在している。メンテナンス及び運行乗務員のライセンスの事を考えれば、当然CRJシリーズを選択する方が効率が良いわけだが、何故かJALはエンブラエルを選択した。

 件の記事に「燃料の使用量も大幅に少ない」とあったが、166席のMD-90と70席のE170を比較すればE170の燃料使用量が大幅に少ない当然のこと。比較すべきはMD-90ではなくボンバルディアCRJ-700なのである。運行乗務員のライセンスの点でもCRJ-200と700あるいは900であれば最小の訓練で2機種あるいは3機種の乗務が可能のはず。また、メンテナンスも同様である。だから郷秋<Gauche>にはJALがエンブラエルを選択した理由がよくわからない。あえてE170のメリットを上げれば、このクラスで唯一、ボーディングブリッジを使っての乗降が可能なことくらいである(胴体幅が17cm広く極わずかだが、横方向の余裕がある)。

 エンブラエルを導入することの二つ目に問題は、YS-11以来の国策(国産)旅客機であるMRJを、旧国策会社であるJALが導入しなくて良いのかと云うことである。MRJについては郷秋<Gauche>も幾度も書いているが、今、日本が国の総力をあげ、名だたる企業多数が参画して推進する世紀のビッグプロジェクトである。一大国家プロジェクトとして誕生するMRJについてはANAが25機(オプション10機)、政府が10機を導入すべく既に発注済みとなっているが、ローンチ(生産開始)には100機程度が必要と思われるからANAと政府専用機の合計35(45)機だけではまだまだ足らない。

 さて、先の衆議院議員選挙の結果、民主党が大勝利し与野党逆転となったわけだが、自民党政権の中で推進されてきたMRJ計画を民主党政権が継続するのか。政府専用機として10機発注されたMRJの運命は。果たして航空行政がどうなるのかは今しばらくの様子見が必要となるだろう。航空行政絡みでは、富士重工業が、自衛隊が60機導入予定であった戦闘ヘリコプター「AH64D」(アパッチロングボウ)の調達を10機で打ち切ったことによる損失(既に支払ったライセンス料など数百億円)の支払いを求め争う姿勢のようだが、自民党政権時代のツケを民主党政権がどう処理するのかも見ものである。

 国策云々と書いてはみたが、企業には企業の都合があることもよくわかる。「国民総動員」では「あの時代」に戻ってしまうようで怖くもある。がしかし、それはおいておくとしても、ヒコーキファンとしては機種数が少なくなり面白みが欠けつつある日本の空に少しでも多くの種類のヒコーキに飛んでいてもらいたい、CRJ、ERJそしてMRJ、その短胴型、長胴型など幾つものヒコーキに乗れる楽しみがあって欲しいと思うわけである。

参考:CRJ、MRJ、ERJについてはこれまでに沢山の記事を書いているので、右側の検索窓からblog内検索をかけて、あるいは同じく右側のカテゴリから「飛行機」をクリックしてご覧いただければ幸いです。


 珍しく記事内容に沿った写真を掲載することが出来た。残念ながら実物はまだ見たことも無いが、たまたまE170の大きなスケールモデルを撮った写真が手元にあったので掲載する。因みにバックは優に2mはあろうかという747-400。
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