ソニーがCMOSセンサーの生産を富士通に委託

 神奈川新聞も時には有益な情報をもたらしてくれる。今日の神奈川新聞にこんな記事が掲載されていた。

 「ソニー(が)デジカメ用半導体(を)富士通に生産委託(―)コスト削減目指して(―)」

ソニーがデジタルカメラで使われる半導体「CMOSセンサー」の生産工程の一部を富士通に委託したようである。ソニーは独自技術が必要な部分のみ社内にとどめて汎用性の高い工程は外部に委託し、生産コストを削減するとのこと。とりわけ最先端の技術をふんだんに投入した製品の生産を海外のメーカーに委託すると、先端技術が海外に流出する恐れがあるとして、同分野で競合しない国内メーカーの富士通に委託するとのこと。

 海外のメーカーに先端技術テンコ盛りの製品の生産を委託しないというソニーの判断を大いに支持したい郷秋<Gauche>である。取り分け著作権とか知的財産権に全く頓着しない国のメーカー生産を委託するべきではない。強大なGDPを誇ったとしても、それに相応しい品格や法令順守精神に欠ける国のメーカーに委託するべきではないのだ。

 経済力だけは強大になっても相応しい責任を果たせない国は、いつまでも下請けだけをしていれば良いのである。日本は、ともに世界のリーダーに成り得る良識・見識、自国の経済力に見合った世界貢献を果たし共に成長し得る国とのみ相互に技術を供与・共有し合えばよいのである。その点、今回のソニーの判断は全く適切なものだと云える。

 閑話休題。記事タイトルに「デジ(タル)カメ(ラ)用半導体」と書かれているけれど、「デジカメ用半導体」の標記を見て、これがデジタルカメラの心臓部、イメージセンサー(撮像素子)のことだとすぐに理解できた方はどれほどいただろうか。

 「半導体」と聞くと(多少ご存知の方でも)トランジスタ、IC、LSIと云ったものを連想はしても、イメージセンサーを思い浮かべることは少ないだろう。良くても所謂「画像処理エンジン用LSI」だろうか。実は郷秋<Gauche>もそうであった。ここは判りやすく「イメージセンサー」とか「撮像素子」と書くべきだろうな。

 ところでこの記事が報じる事実は、今後デジタルカメラメーカーの戦略や製品開発に大きな影響を与える可能性を秘めている。なぜなら、デジタルカメラの心臓部、今日の記事のヒーローたるイメージセンサーを生産できるメーカーが、事実上ソニーとキヤノンの二社しかないからなのである。

 自社で開発・生産できる両社は良いとしても、キヤノンと共にDSLR(デジタル方式一眼レフ)二強の一方であるNikon(ニコン)の場合にはソニー製のイメージセンサーを使用しているために、ソニーに絞めるも緩めるも自由に操ることのできる首輪を着けさせられているようなものなのである。

 度々書いているD700の後継機登場が遅れている最大の理由も実はここにあるわけで、ソニーの動き方次第でニコンは大きな影響を受けることになるのである。それでは極端な例として、ライバルメーカーであるニコンへのイメージセンサー供給をソニーが止めるかと云えば、話はそう簡単ではない。

 問題はコストダウンのための量産化である。DSLRで最も高価なパーツはイメージセンサーであるが、このイメージセンサーのコストダウンのためには量産化しかないのが現状でもあるのだ。つまり、特にDSLR生産比率の低いソニーにとって、自社のDSLR生産コスト削減のためにはイメージセンサーのコストダウンを図らなければならない。つまりソニーよりもはるかにDSLRの生産・販売台数の多いニコンに、もっとたくさんのイメージセンサーを購入してもらわなければならないのである。

 そんな時に、たくさん購入しては欲しいけれど、売るのは「高度な技術が導入うされていない富士通製だけだよ」となってはニコンは困るのである。コンパクトタイプやDSLRでも廉価版であればそれでよいわけだが、フラッグシップであるD一桁シリーズやD700、D300シリーズはそれでは困るのである。

 だからこそニコンは一刻も早くイメージセンサーの自社生産体制をとる必要があるのだが、工場建設ためだけでも膨大な経費が掛かることからそう簡単ではないというお話なのである。しかしだ、現状では生産はできなくても開発・設計はでき、しかも半導体製造設備のメーカーでもあるニコンならば、やって出来ないわけではないイメージセンサーの自社生産である。ニコンがイメージセンサーの内製を始めれば、またぞろデジタルカメラの勢力図が変わってくることは必至。面白くなるんだがなぁ・・・


 例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、今が花のシーズンのタマスダレ。明日はもう少し上手に撮れるだろうか(^^;
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