平成24年9月29日
前回の続き
この日、友人たちからの同情を得るためではないのだが、
何かにつけて自分の緑内障の話題を持ち出した(恥)。
HKくんと旭川の中心街に向かう途中、夕食会場に向かう途中、一次会場にて、二次会場にて・・・。
この数日前、誠意が感じられない医師の対応に怒りを覚えたこともすっかり忘れて、
深刻な事態であるにもかかわらず、私はすっかりウカれていた。
私:「左目が緑内障になっちゃったから、次は眼帯つけて登場するかもしれないな~」
HK&S(シンクロ)「タモリみたいに・・・」
S:「伊達政宗とかカッコイイほうじゃなくて、”タモリ”ねwww」
一同:「ガハハハハ!」
一次会は
「粉もんず 二条昭和通り店」。
飲み放題3500円コース。
みんな腹ペコの様子だったが、15:30すぎにラーメンを食べていたので、さほど空腹ではなかった。
いかにも串揚げ店といった感じで、キャベツのおかわりが自由。
各自注文した飲み物の後は、皿に山盛りのキャベツと缶に並々と入ったソースが運ばれてきた。
”おかわり自由”という響きに、素早く反応したNくんは怒涛の勢いでキャベツにかじりつき始めた。
「うまい、うまい」
そりゃそうだ、腹がすいてりゃなんでもうまい。
周りのみんなもその姿に触発されてか、キャベツの消費量が加速していく。
腹がすいていなかったはずの私も、Nくんの食べっぷりを見ていると、食欲が湧いてきた。
こうしてまずは、アラフォー5人による<キャベツかじり大会>の火蓋が切って落とされた。
キャベツがなくなると、卓上にある鈴をチリリンと鳴らすのだが、さっき頼んだばかりのキャベツが
わずか数分で我々の胃袋におさまり、ふたたび「チリリン」。
アルバイトらしき店員の目にも異様に映っていたのだろうか、なんとなく警戒されてるような印象を受けた。
私の緑内障発症報告を皮切りに、某会恒例・メンバーによる<不健康自慢大会>が始まる。
椎間板ヘルニアの手術から3年たった今でも腰に不安を抱えている者、
仕事による過労・ストレスで激ヤセした者、欝症状を訴える者、
肝臓に持病を抱えていながら不摂生で激太りした者。
五体満足な人間は一人としていない。
不健康自慢がひととおり終わると、今度は仕事に関する<不幸話大会>が始まる。
これは、民間企業に勤める3人(HKくん、Iくん、Sくん)が中心となって、
互いの厳しい労働環境を報告しあうといったものである。
家業を営むNくんは、一歩引いた感じで相変わらずキャベツにかじりついている。
完全フレックスタイム制であるNくんに、「ちょっと、肌にツヤがあるんじゃない?」
と冷やかしの声がかかるが、
「いや~、オレだって忙しい時は・・・」と、あまり気にしていない様子である。
私には個人事業者の友人がNくんも含め数人いる。私の兄もフリーランスである。
顧客、あるいは仕事の依頼者との確かな信頼関係と、いわゆる”腕”がなければ、
生きていくことができないのが、自営業の世界であると私は思う。厳しい世界だ。
彼の言葉に私は、次期社長であり、<N家長男>としての重みを感じざるを得なかった。
そうなると、民間企業戦士のやるせない思い(怒りや憎しみといった負の感情)の矛先は、
国民の血税でのうのうと生活している地方公務員の私に向かってくることは、言うまでもない。
私の目線はテーブルの上のキャベツだけに集中し、いつのまにかNくんと同じ動きを
機械的にとり続けていた。
何かの拍子に、「公務員なんてさ~・・・」という声が聞こえてきた。
「ついに来たか(冷汗)」 私の背筋に緊張が走る。
なにか言い返そうにも、役人を目の敵にしている4人を説き伏せることは不可能である。
「まあ、8か月受験勉強しただけで、65歳まで身分が保証されちゃったわけだからなあ~」
支離滅裂としかいいようがない、訳のわからないことをボヤくのが精いっぱいであった。
Sくんが唐突に
「えー、このたびわたくし、結婚することになりました」
「・・・」
「お、お相手は」
「いつ?」
あまりにも突然すぎる告白に一同唖然。
驚くのを通り過ぎて誰の口からも「おめでとう」の一言が出てこない。
正気を取り戻して、改めて一同で乾杯。
大学卒業15周年記念大会にふさわしい、まことにおめでたいご報告であった。
・・・?
なにか雰囲気が違うことに気付く。
S:「披露宴やるんだけどさー、大変だよね」
HK:「あー、オレも(披露宴)やったけど、大変だった・・・」
ちっともおめでたい空気ではないw
おめでたいはずなのにちっともおめでたい感じにならないではないか。
究極の【ネガティブ思考】・・・これもまた某会らしい一面である。
不健康自慢に始まった近況報告がひととおり終わると、毎度おなじみの昔話に花が咲く。
毎回毎回ほとんど変わらない話なのだが、今回も”満開”の様相を呈した。
公務員バッシングがSくんのご成婚報告でかき消されほっとした私は、
手で大きな三角形をつくり、
「大学出てから、まず、この3人(私、HKくん、Nくん)が集まって~・・・」と、
いつもの調子で昔話をスタートさせた。
15年半前の卒業式終了後、大学側主催の謝恩会が行われ、我々5人は「みんなで
ボーリングに行こう」というグループに参加していた。
ボーリングが終わってから、カラオケ店になだれ込んだグループでも我々は一緒だった。
Iくんがフォークソングが好きでフォークギターを所有していたことは知っていた。
しかし、それ以外の4人の歌声なんて聞いたこともない。歌う姿が想像すらできなかった。
HKくん、Sくんは歌うことなく、その場にいた友人たちと連絡先を書いたメモを交換するなど
学生時代最後のひとときを楽しんでいた。
Nくんがマイクを握る。これは意外だった。彼は歌うことが好きだったのだ。
次から次へとレパートリーを披露。歌よりも会話に専念する人が大多数を占める中、彼は歌い続けた。
しかもNくん、歌が上手いじゃないか。
「あの時は、Nくんが一番上手かった(酔)」とは、Iくんの発言である。
さしずめ<N氏・歌謡ショー>といった具合であった。
当時流行っていた格闘ゲームで無敵を誇った彼は、カラオケでも他を寄せ付けない存在感を
見せてつけていた。いや、ただ歌うのが好きなだけだな・・・。
こうなると、根が目立ちたがりやの私は、彼への対抗心がメラメラと燃え始め、
彼の足をちょっと引っ張りたくなるような衝動に駆られた。
そこで選んだ曲が、「超時空要塞マクロス」オープニングテーマ・
「マクロス」。
それまでカラオケボックス内の空気が一転、
荘厳なイントロから始まり、古き良き80年代アニメソングが流れはじめた。
Nくんを邪魔してやろうというちょっとしたイタズラ心のつもりだったのが、
私はその場にいた仲間から拍手・喝采を浴びてしまった。全く予想していなかった。
それからというものの、Nくんの影はすっかり薄れてしまい、昔のアニメソングで盛り上がるという
一風変わった感じのカラオケになったと記憶している。
Nくんも負けじと「聖闘士星矢」オープニング「ペガサスファンタジー」を歌おうとしたが、
今までのペースが乱れてしまったのか声が出ない。挙げ句の果てには曲の途中で
「あ゛ー! あ゛ー!」と大声で発声練習を始める始末である。
私は、「Nくん、うるさいよw」と注意した記憶がある。
憮然とした表情のNくん。
大きな目をさらに大きくして驚きの表情を隠せないHKくん。
そりゃそうだ、在学中ずっと一緒にいた友人の初めて聞いた歌が「マクロス」だったのだから。
この歌をきっかけに、まず3人の絆が深まっていった。
「マクロス」は、いわば【某会の起源】なのである。
話題は変わって、
「Aくん、覚えてる?今、札幌でフリーフィットネスインストラクターやってるんだってさ」
「彼にピッタリの職業だと思う」
「たしか運動神経めちゃめちゃ良かったよな」
「バレーボールがうまかったよ」
「彼のアパートでバレーボールのビデオ見た」
「そういえば、アパートにジュリアナの扇子が置いてあった」
「よくメシ作ってもらったりしたんでしょ?ちょっとした夫婦だなw」
話が尽きることはない。時刻は21;56。
待望の2次会、カラオケ大会の時間が迫ってきた。
会計を済ませて、我々は決戦の地へと向かうのであった。