前回より続く
1月15日朝、網走市は肌に突き刺さるような寒さだった。
駅前のホテルを出発。
あまり覚えていないが、気温は氷点下10℃くらいだったと思う。
網走湖沿いの凍結路面を、ビクビクしながら走り抜け、30分ほどで女満別空港に到着。
ホテルを出るときはバタバタしていたが、その割には思っていたよりも早く着いた。
大きな荷物は搭乗手続きと同時に預け、我々は手荷物保安検査場に向かった。
今回の旅行に、ウッディ人形を連れて行くとの主張を退けられ、前の日の晩は機嫌の悪かった長男だったが、
一晩明けたら、そんなことはどこ吹く風といったカンジで、ケロッとしている。
年を重ねるごとに、彼のことがどんどん理解できなくなってくる。
親子の関係とは、こんなものなんだろうか。
さて、家族旅行において添乗員役の私は、家族に飛行機のチケットを配り、
もうすぐ4歳になる次男の手を引いて、危険物チェックのゲートをくぐる。
異常なし。でも、アレをくぐるときはいつもドキドキする。
我々のあとには、妻と長男が続く。
妻か長男の荷物が、検査に引っかかった。
「ハサミが検知されました」
ハ、ハサミ!?
信じられないことが起きた。我が家族の中に、テロでも企んでいる奴がいたのか!?
最初、妻が化粧道具入れの中に鼻毛切りでも入れてきたのかとも思った。
しかし、私の推測は外れていた。
・・・犯人は、長男だった。普段学校で使っているペンケースを隠し持っていたのだ。
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このぬいぐるみペンケースも、旅のお供として連れて行くつもりだったそうだ。
どうりで長男のカバンがパンパンだったわけだ。
ウッディ人形ばかりに気を取られていて、私も妻も長男のカバンの中身をチェックしていなかった。
私はしばらく言葉を失っていた。
次男の世話で精一杯だったので、真相を聞き出せたのはしばらくしてからのことである。
前回の旅行では、着陸態勢に入りシートベルトのサインがついたとたんに
「おしっこ・・・」と言い出し、着陸まで泣きながら尿意との激闘を繰り広げた長男。
今回もまたやってくれた、このドジっ子は。
飛行機に搭乗。
動き出す前から乗り物に弱い前述のドジっ子くんは、メガネを外し目をつぶり精神統一。
以前飛行機がものすごく揺れた際に、数々の乗り物酔いを経験してきた私の
「あ!その姿勢はダメだ!」という声に耳を貸さず、グズって椅子に浅く腰掛けていた彼は、
数分後に起きた惨劇・・・上半身ゲ○まみれになった経験がトラウマとして残っているのだろう。
JALのエチケット袋を握り締め、ひたすら瞑想を続けていた。そしていつの間にか寝ていた。
羽田空港に到着。
まずは、大きなスーツケースと部活動の遠征にもっていくようなアディダスのスポーツバックを
ホテルに発送しなければならない。
今回のパック旅行の特典の一つであるのだが、指定会社である日本通運の発送カウンターが見つからない。
「先に(TDR行きの)バス停に行って待ってて。」
と家族3人を送り出し、私は右手で特大スーツケースを引きずり、左肩にはパンパンに荷物の詰まった
スポーツバックを担ぎ、日本通運のカウンターを探した。
通りすがりの空港職員に「地下1階だと思います」と言われたが、地下に降りても見つからない。
別の空港職員に尋ねると「私、つい先日まで成田空港に勤務していまして、ここのことが・・・」という回答。
すっかり息が上がってしまい、フラフラになりながら他社の発送カウンターで、
「日本通運さんのカウンターはどこでしょうか?」と聞くと、
「南ウイングにございます。ここは北ウイングですので、ずーっと向こうになります。」
気が遠くなってきた。
足元がおぼつかない。腰から下に力が入らない。
しかしそうも言っていられず、特大の荷物二つを引きずりそして担ぎながら、なんとか南ウイングに到着。
発送の手続きを済ませ外に出ると、家族が待っているバス停から、遥か遠く離れてしまっていた。
重たい荷物から解放されて、ホッとするのも束の間、今度は家族が待っているバス停目指して羽田空港前を走り始めた。
・・・そういえば、前回の旅行でもバスに遅れそうになって、40歳の誕生日に猛ダッシュしたっけ(恥)。
今回は猛ダッシュでこそなかったが、いそいそと行き交う人のあいだを縫って、
リュックを背負った貧乏臭い格好のオヤジが、ヒョコヒョコと走っていた姿を思い起こすと、とても恥ずかしい。
やっとの思いで家族の元へたどり着いたが、TDR行きのバス停は長蛇の列であった。
いつも利用していたJALのパック旅行では、到着口近くの発送カウンターに荷物を預け、
玄関を出て徒歩2、3分の駐車場に行けば、事前に予約した専用のバス(マジカルファンタジー号)に乗るだけなので、
TDRまでの移動はとても楽だったのだが、前回旅費を奮発した分、今回はよりリーズナブルなパック旅行にしたため、
荷物発送には時間がかかるし、バスも乗車券だけが送られてきただけで、予約が必要だったなんて知らなかった。
結局、バス停に着いてから3本のバスを見送ることとなってしまった。
こうして私は目的地に着く前に、かなりの体力を消耗してしまったのだった。
つづく
1月15日朝、網走市は肌に突き刺さるような寒さだった。
駅前のホテルを出発。
あまり覚えていないが、気温は氷点下10℃くらいだったと思う。
網走湖沿いの凍結路面を、ビクビクしながら走り抜け、30分ほどで女満別空港に到着。
ホテルを出るときはバタバタしていたが、その割には思っていたよりも早く着いた。
大きな荷物は搭乗手続きと同時に預け、我々は手荷物保安検査場に向かった。
今回の旅行に、ウッディ人形を連れて行くとの主張を退けられ、前の日の晩は機嫌の悪かった長男だったが、
一晩明けたら、そんなことはどこ吹く風といったカンジで、ケロッとしている。
年を重ねるごとに、彼のことがどんどん理解できなくなってくる。
親子の関係とは、こんなものなんだろうか。
さて、家族旅行において添乗員役の私は、家族に飛行機のチケットを配り、
もうすぐ4歳になる次男の手を引いて、危険物チェックのゲートをくぐる。
異常なし。でも、アレをくぐるときはいつもドキドキする。
我々のあとには、妻と長男が続く。
妻か長男の荷物が、検査に引っかかった。
「ハサミが検知されました」
ハ、ハサミ!?
信じられないことが起きた。我が家族の中に、テロでも企んでいる奴がいたのか!?
最初、妻が化粧道具入れの中に鼻毛切りでも入れてきたのかとも思った。
しかし、私の推測は外れていた。
・・・犯人は、長男だった。普段学校で使っているペンケースを隠し持っていたのだ。

このぬいぐるみペンケースも、旅のお供として連れて行くつもりだったそうだ。
どうりで長男のカバンがパンパンだったわけだ。
ウッディ人形ばかりに気を取られていて、私も妻も長男のカバンの中身をチェックしていなかった。
私はしばらく言葉を失っていた。
次男の世話で精一杯だったので、真相を聞き出せたのはしばらくしてからのことである。
前回の旅行では、着陸態勢に入りシートベルトのサインがついたとたんに
「おしっこ・・・」と言い出し、着陸まで泣きながら尿意との激闘を繰り広げた長男。
今回もまたやってくれた、このドジっ子は。
飛行機に搭乗。
動き出す前から乗り物に弱い前述のドジっ子くんは、メガネを外し目をつぶり精神統一。
以前飛行機がものすごく揺れた際に、数々の乗り物酔いを経験してきた私の
「あ!その姿勢はダメだ!」という声に耳を貸さず、グズって椅子に浅く腰掛けていた彼は、
数分後に起きた惨劇・・・上半身ゲ○まみれになった経験がトラウマとして残っているのだろう。
JALのエチケット袋を握り締め、ひたすら瞑想を続けていた。そしていつの間にか寝ていた。
羽田空港に到着。
まずは、大きなスーツケースと部活動の遠征にもっていくようなアディダスのスポーツバックを
ホテルに発送しなければならない。
今回のパック旅行の特典の一つであるのだが、指定会社である日本通運の発送カウンターが見つからない。
「先に(TDR行きの)バス停に行って待ってて。」
と家族3人を送り出し、私は右手で特大スーツケースを引きずり、左肩にはパンパンに荷物の詰まった
スポーツバックを担ぎ、日本通運のカウンターを探した。
通りすがりの空港職員に「地下1階だと思います」と言われたが、地下に降りても見つからない。
別の空港職員に尋ねると「私、つい先日まで成田空港に勤務していまして、ここのことが・・・」という回答。
すっかり息が上がってしまい、フラフラになりながら他社の発送カウンターで、
「日本通運さんのカウンターはどこでしょうか?」と聞くと、
「南ウイングにございます。ここは北ウイングですので、ずーっと向こうになります。」
気が遠くなってきた。
足元がおぼつかない。腰から下に力が入らない。
しかしそうも言っていられず、特大の荷物二つを引きずりそして担ぎながら、なんとか南ウイングに到着。
発送の手続きを済ませ外に出ると、家族が待っているバス停から、遥か遠く離れてしまっていた。
重たい荷物から解放されて、ホッとするのも束の間、今度は家族が待っているバス停目指して羽田空港前を走り始めた。
・・・そういえば、前回の旅行でもバスに遅れそうになって、40歳の誕生日に猛ダッシュしたっけ(恥)。
今回は猛ダッシュでこそなかったが、いそいそと行き交う人のあいだを縫って、
リュックを背負った貧乏臭い格好のオヤジが、ヒョコヒョコと走っていた姿を思い起こすと、とても恥ずかしい。
やっとの思いで家族の元へたどり着いたが、TDR行きのバス停は長蛇の列であった。
いつも利用していたJALのパック旅行では、到着口近くの発送カウンターに荷物を預け、
玄関を出て徒歩2、3分の駐車場に行けば、事前に予約した専用のバス(マジカルファンタジー号)に乗るだけなので、
TDRまでの移動はとても楽だったのだが、前回旅費を奮発した分、今回はよりリーズナブルなパック旅行にしたため、
荷物発送には時間がかかるし、バスも乗車券だけが送られてきただけで、予約が必要だったなんて知らなかった。
結局、バス停に着いてから3本のバスを見送ることとなってしまった。
こうして私は目的地に着く前に、かなりの体力を消耗してしまったのだった。
つづく