障害者自立支援法の見直し求め6千人集会 東京・日比谷
2007年10月30日21時03分
障害者に福祉サービス利用料の原則1割負担を義務づけた障害者自立支援法の見直しを求めて、障害者や支援者約6000人が30日、東京・日比谷野外音楽堂で集会を開いた。与野党で同法見直しの機運が高まるなか、当事者の声を国会に届けようと、日本障害者協議会などが呼びかけた。
全国各地からの現場報告では、障害者らが「作業所に通って工賃をもらっても給食費を払ったら手元に10円しか残らない」「貯金や退職金を切り崩して生活している」と苦しい現状を口々に訴えた。また「普通のひととして生きるためのサービスをなぜ『益』とみなし負担させるのか。『応益負担』の撤廃を」などの声も上がった。
政党シンポジウムもあり、自民、公明、民主、共産、社民各党の国会議員が参加。1割負担を廃止する改正案を参院に提出した民主党の議員らが抜本的見直しを主張したのに対し、与党側議員は「所得保障をしたうえで1割を払えるようにすることが大事」などと応じた。
「自立支援法どうする!」与野党議員が激突
「応益負担は早急に廃止すべきだ」「プロジェクトチームで一つひとつ検討を進めている」―。東京都千代田区の日比谷音楽堂で開かれ、障害者とその家族、関係団体ら約6,500人が参加した「今こそ変えよう!『障害者自立支援法』10・30全国大フォーラム」。7月の参議院選挙で与野党逆転現象が起き、同法の見直しに注目が集まる中、5人の与野党国会議員がそれぞれの意見を闘わせた。同法に問題点があり、「見直しが必要」とする点では一致したが、「現行法の枠内で見直しを検討する」という自民・公明の与党側と、「応益負担などに関して法の根本から見直すべき」とする野党側の意見に食い違いが見られた。見直し時期についても、開会中の臨時国会で「緊急措置的にまず同法の一部凍結を図る」野党側と、「来年の通常国会で検討しよう」とする与党側の見解が異なり、議論は平行線をたどった。(金子俊介)
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「応益負担」廃止へ自立支援法フォーラム
同法は、2005年10月の特別国会で与党の強行採決により可決。昨年4月1日から施行されている。障害者福祉サービスや医療に対する利用者の原則1割負担(応益負担)の導入や受けられるサービスの限度を規定する「障害者程度区分」の設定不備、また事業者の報酬単価の引き下げなどの問題があり、各方面から不満が噴出した。
批判の高まりにより、政府は昨年年末から08年度まで1,200億円に上る「特別対策」を実施。一定の負担軽減や事業者への報酬保障をもたらしているが、早急な見直しを求める現場は早急な見直しを求める多様な運動を展開し続けている。
このような情勢を受け、今年9月、福田内閣が「同法の抜本的見直しを検討する」という方針を打ち出すとともに、参院で過半数を得た民主党が応益負担の中止を柱とする緊急措置的な改正法案を臨時国会に提出しており、同法の行方へ高い関心が寄せられている。
この日開かれた大フォーラムの政党シンポジウムには、自民党の菅原一秀衆議院議員、民主党の園田康博衆議院議員、公明党の高木美智代衆議院議員、共産党の紙智子参議院議員、社民党の保坂展人衆議院議員が出席。パネルディスカッション形式で意見を闘わせた。
自民党の菅原議員と公明党の高木議員は、現行法の評価について聞かれ、「理念は素晴らしい」としたものの、「現場との食い違いがあり課題点はある」との認識を示した。その上で、昨年末から実施している特別対策に言及。「一定の負担軽減などの効果をもたらしている」と強調するとともに、それ以外の内容についても「与党のプロジェクトチームで一つひとつ見直しを検討している」と発言した。
これに対し、民主党の園田議員は、「応益負担は絶対に必要ない」と断言。特別対策の実施についても苦言を呈(てい)し、「法自体の根幹が間違い」と指摘した。紙議員も応益負担を中心に批判を展開し、「早期に抜本的な見直しを行うべき」と主張。また、保坂議員も「重度の人が多くの負担をするという法律の哲学がそもそも悪い」と語った。
今後の法の行方については、見直しの内容とスケジュールという2つの観点から議論した。
園田議員は「応益負担を中止させるなどの改正法案を臨時国会の会期中に通したい」として緊急避難的な措置を講じる必要性を訴えるとともに、「負担のあり方や障害者区分のあり方などの見直しを盛り込んだ総合サービス法を来年度中に国会に提出する」と表明。現行法の枠外で見直しを図ることを強調し、紙議員と保坂議員も党としてこれに協力していく考えを示した。
一方、高木議員は、「法改正、政省令、予算措置それぞれで、どのような見直しができるかを十分検討している」として内容に関する明言は避けた。しかし、「個人としては、きちんとした所得保障を行った上でサービスに応益負担を課すことも大事ではないかと思っている」と話すなど、財源への配慮の姿勢を終始堅持。菅原議員も「応益と応能の違いは実は難しい」とした上で、「国民的な議論に発展させていきたい」とするにとどめ、検討の具体的なスケジュールについても明かさなかった。
参議院の厚生労働委員会は、民主党が提出した「年金保険料流用禁止法案」や「特定肝炎対策緊急措置法案」など多くの審議項目を抱えており、残り少ない会期中に障害者自立支援法に関する議論の実施を危ぶむ声もある。これに関して園田議員は「年金保険流用禁止法案のあとには障害者自立支援法の審議になると思う」と発言。11月から本格的な議論を開始することを示唆した。
2007年10月30日21時03分
障害者に福祉サービス利用料の原則1割負担を義務づけた障害者自立支援法の見直しを求めて、障害者や支援者約6000人が30日、東京・日比谷野外音楽堂で集会を開いた。与野党で同法見直しの機運が高まるなか、当事者の声を国会に届けようと、日本障害者協議会などが呼びかけた。
全国各地からの現場報告では、障害者らが「作業所に通って工賃をもらっても給食費を払ったら手元に10円しか残らない」「貯金や退職金を切り崩して生活している」と苦しい現状を口々に訴えた。また「普通のひととして生きるためのサービスをなぜ『益』とみなし負担させるのか。『応益負担』の撤廃を」などの声も上がった。
政党シンポジウムもあり、自民、公明、民主、共産、社民各党の国会議員が参加。1割負担を廃止する改正案を参院に提出した民主党の議員らが抜本的見直しを主張したのに対し、与党側議員は「所得保障をしたうえで1割を払えるようにすることが大事」などと応じた。
「自立支援法どうする!」与野党議員が激突
「応益負担は早急に廃止すべきだ」「プロジェクトチームで一つひとつ検討を進めている」―。東京都千代田区の日比谷音楽堂で開かれ、障害者とその家族、関係団体ら約6,500人が参加した「今こそ変えよう!『障害者自立支援法』10・30全国大フォーラム」。7月の参議院選挙で与野党逆転現象が起き、同法の見直しに注目が集まる中、5人の与野党国会議員がそれぞれの意見を闘わせた。同法に問題点があり、「見直しが必要」とする点では一致したが、「現行法の枠内で見直しを検討する」という自民・公明の与党側と、「応益負担などに関して法の根本から見直すべき」とする野党側の意見に食い違いが見られた。見直し時期についても、開会中の臨時国会で「緊急措置的にまず同法の一部凍結を図る」野党側と、「来年の通常国会で検討しよう」とする与党側の見解が異なり、議論は平行線をたどった。(金子俊介)
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「応益負担」廃止へ自立支援法フォーラム
同法は、2005年10月の特別国会で与党の強行採決により可決。昨年4月1日から施行されている。障害者福祉サービスや医療に対する利用者の原則1割負担(応益負担)の導入や受けられるサービスの限度を規定する「障害者程度区分」の設定不備、また事業者の報酬単価の引き下げなどの問題があり、各方面から不満が噴出した。
批判の高まりにより、政府は昨年年末から08年度まで1,200億円に上る「特別対策」を実施。一定の負担軽減や事業者への報酬保障をもたらしているが、早急な見直しを求める現場は早急な見直しを求める多様な運動を展開し続けている。
このような情勢を受け、今年9月、福田内閣が「同法の抜本的見直しを検討する」という方針を打ち出すとともに、参院で過半数を得た民主党が応益負担の中止を柱とする緊急措置的な改正法案を臨時国会に提出しており、同法の行方へ高い関心が寄せられている。
この日開かれた大フォーラムの政党シンポジウムには、自民党の菅原一秀衆議院議員、民主党の園田康博衆議院議員、公明党の高木美智代衆議院議員、共産党の紙智子参議院議員、社民党の保坂展人衆議院議員が出席。パネルディスカッション形式で意見を闘わせた。
自民党の菅原議員と公明党の高木議員は、現行法の評価について聞かれ、「理念は素晴らしい」としたものの、「現場との食い違いがあり課題点はある」との認識を示した。その上で、昨年末から実施している特別対策に言及。「一定の負担軽減などの効果をもたらしている」と強調するとともに、それ以外の内容についても「与党のプロジェクトチームで一つひとつ見直しを検討している」と発言した。
これに対し、民主党の園田議員は、「応益負担は絶対に必要ない」と断言。特別対策の実施についても苦言を呈(てい)し、「法自体の根幹が間違い」と指摘した。紙議員も応益負担を中心に批判を展開し、「早期に抜本的な見直しを行うべき」と主張。また、保坂議員も「重度の人が多くの負担をするという法律の哲学がそもそも悪い」と語った。
今後の法の行方については、見直しの内容とスケジュールという2つの観点から議論した。
園田議員は「応益負担を中止させるなどの改正法案を臨時国会の会期中に通したい」として緊急避難的な措置を講じる必要性を訴えるとともに、「負担のあり方や障害者区分のあり方などの見直しを盛り込んだ総合サービス法を来年度中に国会に提出する」と表明。現行法の枠外で見直しを図ることを強調し、紙議員と保坂議員も党としてこれに協力していく考えを示した。
一方、高木議員は、「法改正、政省令、予算措置それぞれで、どのような見直しができるかを十分検討している」として内容に関する明言は避けた。しかし、「個人としては、きちんとした所得保障を行った上でサービスに応益負担を課すことも大事ではないかと思っている」と話すなど、財源への配慮の姿勢を終始堅持。菅原議員も「応益と応能の違いは実は難しい」とした上で、「国民的な議論に発展させていきたい」とするにとどめ、検討の具体的なスケジュールについても明かさなかった。
参議院の厚生労働委員会は、民主党が提出した「年金保険料流用禁止法案」や「特定肝炎対策緊急措置法案」など多くの審議項目を抱えており、残り少ない会期中に障害者自立支援法に関する議論の実施を危ぶむ声もある。これに関して園田議員は「年金保険流用禁止法案のあとには障害者自立支援法の審議になると思う」と発言。11月から本格的な議論を開始することを示唆した。