「聞こえない人が地元で普通にあいさつして、誰かとつながる」。県聴覚障害者協会の嘉田眞典さん(53)=三田市ゆりのき台=が目指すそんな社会を実現するためには、聞こえる人の理解と協力が不可欠だ。嘉田さんを含め、昨年から聴覚障害のある人への取材を続けてきて、その思いを強めている。
昨年12月、県内のろう者の男性に取材を試みた。ファクスで取材依頼を送ったが、反応が無い。男性宅を訪れ、簡単な筆談や手ぶり身ぶりで会話すると、男性は「文章は読めるけど、書くのは苦手」。だからファクスは返せなかった。聴覚障害者の中には、日本語は第2言語という人もいる。手話を母語とする人が、誰でも日本語に通じているわけではないと知った。自分の先入観に気付かされた瞬間だった。