発達障害の支援のあり方を話し合う参加者=17日午後、松山市文京町
発達障害への理解を深め、より良い支援を行うための勉強会「大人の発達障害と自殺問題を考える」が17日、松山市文京町の愛媛大学であり、弁護士や医療従事者、発達障害の子どもをもつ親など約50人が対応や支援のあり方を考えた。
2018年2月18日 (愛媛新聞)
発達障害の支援のあり方を話し合う参加者=17日午後、松山市文京町
発達障害への理解を深め、より良い支援を行うための勉強会「大人の発達障害と自殺問題を考える」が17日、松山市文京町の愛媛大学であり、弁護士や医療従事者、発達障害の子どもをもつ親など約50人が対応や支援のあり方を考えた。
2018年2月18日 (愛媛新聞)
小学校から高校まで地域の公立学校で学び、東京大のバリアフリー教育開発研究センターで研究を続ける星加良司(ほしかりょうじ)准教授(42、全盲)。かつては「自分のアイデンティティー(自己同一性)は障害とは別のところにあるはずだ」と、障害に関係する分野から遠ざかろうとしていた時期もあった。しかし、障害を「社会モデル」で考える障害学に出会って、長年の違和感を整理できた。障害というフィルターを通して、社会の本質をとらえ直して世に伝えていこうと日々、教育研究に忙しい。
■「当たり前」に違和感
5歳で視力を失った。学校はどうすべきか。入院していた東京では、地域の学校で学ぶ「統合教育」の事例があった。地元の愛媛県ではどうかと、両親は教育委員会に折衝した。健康管理などの面で寄宿舎での生活は難しいことから、特例として地元の学校への入学が認められた。
しかし、教材などは家族が準備するしかなかった。読むのは点字、書くのはレーズライター。立体コピーも活用した。点字の教科書もなく、最初は母親が一人で点訳していた。ただ、分量が増えると対応しきれなくなり、関西や関東の点訳ボランティアグループなどに連絡して、協力を取り付けた。
年度末になると、「来年はどうしますか」と聞かれ、教育委員会や小学校、盲学校の関係者を交えて、会議が持たれた。学年が上がれば勉強も難しくなる。「無理をしないで、できるだけ専門的な支援体制のある盲学校の方がいいのでは」というメッセージが送り続けられている、と感じた。家族をはじめ、多くの点訳ボランティアの協力で教材が準備され、学べる環境は整えてもらえていた。だからこそ、本人や家族の思いより、視覚障害の子供は盲学校に通うことが当然というような現場の様子に「怒りよりも違和感が強く残った」。星加さんはこう当時を振り返る。
1994年に、東大文科3類に合格した。大学で勉強するうちに興味を持ったのは社会学だった。95年には阪神大震災が起き、ボランティア活動が注目を集めた。「お金をもらわないのに、なぜ、人はボランティア活動をするのか」。法制度や経済活動では説明できないメカニズムで動くものがある、この社会の在り方をもっと追究したくなった。
一方、障害学を巡る研究会が90年代後半、日本でも始まっていた。障害者が経験する困難は、その人自身の機能障害によって生じているのではなく、社会の仕組みや環境が障害のない人の都合に合わせて作られている結果、生じていると捉える「障害の社会モデル」を基盤に、社会の側に変化を促すものだ。「もやもやしていたものが整理される枠組みを与えられた」。自分がこれまで感じてきた違和感こそが、社会を読み解く手がかりになると発見し、本格的な研究テーマとなった。
■バリアへの加担、意識して
現在は、バリアフリーの推進や、人間の多様性の理解促進に向けて、学生や企業の人が学べる研修プログラムの開発などに力を入れる。
障害を理解してもらうというと、車いすやアイマスクを使った身体的な疑似体験や、障害のある人の成功談や人生体験を聞くような講演会などが方法としてとられ、学校や企業の教育研修で行われている。ただ、それだけでは不十分だという。
障害理解教育で、星加さんが現在、大切にしているのは、マイノリティー(少数者)の問題とされがちなものを、社会全体でどう「私たちの問題」として考え直せるか、という視点だ。その気づきを促すプログラムも作成した。プログラムでは、具体的なエピソードについての「迷惑度判定」をするグループワークを行う。ギャンブルの要素を組み込んだクイズ大会形式のゲームも行い、私たちの中にある先入観や社会的不平等に関する体感的な気づきを提供する。
バリアは障害者だけの問題ではない。例えば、日本語を使って授業することのバリアは何か。日本語を理解できていない外国からの留学生や聴覚障害の学生には伝わらない。話すスピードによっては知的・発達障害の人には理解しづらいことがある。星加さんは「『バリアを作ることに、自分が加担していないか』ということも常に意識してほしい」とも訴える。障害の社会モデルという考え方が世に知られるようになってきているからこそ、それが提示する厳しい批判精神についても伝えている。
2018年2月18日 毎日新聞
障がい者の日常的な生活を支える手段として、情報通信技術(ICT)が活躍している。ICTは手軽なコミュニケーション手段や短時間での情報収集など、生活を豊かにする存在として欠かせないものとなった。SI(システム構築)各社は障がい者に向けて、ICTを活用して支援する取り組みを始めている。
インテックは、視覚障がい者の買い物を支援するツール「音声読み上げスキャナ」を開発した。専用ソフトをダウンロードしたスマートフォンを利用し、スマホのカメラ機能で店頭の商品を写すと、音声で商品名など商品情報を読み上げる。
画面が見えなくても正しく撮影できるナビゲーション機能も搭載している。画像認識技術と、画面が見えなくても商品を写せる独自のフレームイン技術を活用した。
今後は陳列棚までのナビや店内の障害物検知などと組み合わせて、買い物支援サービスとして実用化する予定。
日立ソリューションズは色識別が困難な色覚障がい者向けにウェブサイトや資料、書類のデザインに一定の規定を設ける。ユーザーの体験をデザインする「UXデザイン」の専任部署があり、ウェブアクセシビリティー(利用しやすさ)の日本工業規格に準拠したアクセシビリティーのノウハウや、色覚障がい者でも困らないような操作画面、資料作りを支援している。「顧客企業の担当者からの声があり、2013年に設定した」(戦略技術部)という。
また、子会社の日立ソリューションズ・クリエイト(東京都品川区)の音声合成技術を活用した文書音声化ソフトは、視覚障がい者の読書支援に一役買っている。ソフトは画面に文章を入力し、再生ボタンを押すと音声で読み上げる。デジタルデータ化した文章であれば、コピーして使える。言語は日本語、英語、中国語に対応する。
元々は「エンターテインメント関連やカーナビゲーションに応用できるのではないか」(産業・流通システム事業部)と想定し、企業がビジネスに活用するためのソフトとして開発した。eラーニング資料の作成や電話の自動応答などで利用されている。現在までに1000社以上への導入実績がある。
15年からは障がい者支援のツールとして利用が始まった。きっかけは、東京大学の先端科学技術研究センターが主催する教育支援活動にある。障害や病気のある学生への教育支援活動に賛同し、同ソフトを無償で提供した。視覚障害などで読むことが困難な学生に読書支援ツールとして提供し、現在でも継続的に利用されているという。
このほか、ある企業の音声図書作成ソフトの音声作成機能としても組み込まれた。これにより読書困難者向け音声図書の制作者の作業を効率化する。さらに利便性を高めるため、より人の声に近くするなど音声合成技術の改良を検討している。
一方、NTTデータとシャープは人工知能(AI)技術を活用し、聴覚障がい者を支援するソフトを開発した。ソフトを搭載したシャープのロボット型携帯電話「ロボホン」が手話通訳を行う。AI技術で聴覚障がい者の手話の動きを認識・分析し、手話の意味する単語を日本語で発する。
また、発話した内容をスマホなどの他の端末にチャット形式で表示する。「企業の窓口対応など、手話通訳や手話教育で活用される」(AI&IoTビジネス部)ように早期の実用化を目指す。
NTTデータとシャープは「ロボホン」で手話通訳
日刊工業新聞 2018年2月16日
知的障害のある春日市須玖の若松久美子さん(29)が太宰府市宰府のカフェ「レインボーパフィン」で個展を催している。中学時代にアクリル画を始めて以来、仕事をしながら今も絵も続ける若松さんが「支えていただいた皆さんへの感謝の気持ちを込めて」開く初めての個展だ。28日まで。
若松さんは5歳の時、知的障害があると診断された。春日市の中学校で教室の黒板に絵を描く若松さんを見た担任の先生が「絵を習ったら」と勧めた。早速、大野城市南ケ丘で障害者に絵などを指導する松沢佐和子さん(58)の造形教室に通い始めた。中2だった。
最初はうまく描けなかったが、慣れると描くのが楽しくなった。中3で作品「ミミズクとくだもの」が二科ジュニア絵画展に入選。進学した県立特別支援学校「北九州高等学園」の1年~3年と連続で高校保健会主催の環境保護ポスターコンクールで入選、3年では県の「会長賞」を受けた。
今まで一番、うれしかった受賞は2013年の国際障害者交流センター(大阪)主催の「ビッグ・アイ アートプロジェクト2013」で、兄の長男を描いた作品「私のおいっこ」が入選したこと。その作品は全国巡回展やアジアなど海外展でも展示された。
今回、展示しているのは花と動物など計21点。福岡市天神のカレーショップに勤務しながら、こつこつと描き続ける若松さんの絵を「ほんわかとした、癒やされるような色使いが特徴。心が伝わる絵だと思います」と松沢さんは評価する。
18日午前11時半から春日市在住のギタリスト奥田英理さんの応援ランチコンサートがある(要予約、参加費2千円)。
=2018/02/18付 西日本新聞朝刊=
学校や大学などで聴覚障害者を支援する「学術手話通訳者」の養成に関するシンポジウムが18日午後1~5時、群馬大荒牧キャンパス(前橋市荒牧町4)で開かれる。手話の普及や啓発を掲げる手話言語条例が全国127自治体で制定され(2月8日現在)、今後、特に教育分野で手話ができる人材が必要とされる中、養成の現状と課題を議論する。
さらに、手話研究者で大阪大キャンパスライフ健康支援センターの中野聡子さんが「学術手話通訳と聴覚障害学生支援をめぐる諸課題」と題して講演する。中野さんは聴覚障害者で、さまざまな手話通訳養成プログラムの開発に取り組んでいる。
県内で手話言語条例を制定しているのは県と、前橋、中之条など11市町。施策方針として、小中学校での手話に関する授業や教職員向け研修を計画している自治体もある。
シンポジウム会場は教養教育GB棟155教室。問い合わせは群馬大手話サポーター養成プロジェクト室の電話兼ファクス(027・220・7157)。
毎日新聞 2018年2月18日