猫じじいのブログ

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岸田文雄の所信表明は歴代自民党の政策に意味不明な美辞麗句をまぶしただけ

2021-10-08 23:32:10 | 政治時評

きょう、岸田文雄は第100代内閣総理大臣として国会で所信表明を行った。

所信表明の時間帯に、私はNPOで働いていたので、じかに聞くことができなかったが、ネット上の読売新聞と朝日新聞の演説全文を読む限り、そのスピーチは、美辞麗句というか、いわゆるキーワードがちりばめられているが、具体的には安倍晋三のとってきた政策を踏襲している。

《 私は、この国難を、国民の皆さんと共に乗り越え、新しい時代を切りひらき、心豊かな日本を次の世代に引き継ぐために、全身全霊をささげる覚悟です。》

「全身全霊」とは、まるで、横綱襲名のときの挨拶のようである。「心豊かな日本」は安倍の「美しい日本」のパロディであろう。「国難」とは「コロナ」のことだろうか。

《 まず、喫緊かつ最優先の課題である新型コロナ対応に万全を期します。国民に納得感を持ってもらえる丁寧な説明を行うこと、常に最悪の事態を想定して対応することを基本とします。》

《 また、新型コロナで大きな影響を受ける方々を支援するため、速やかに経済対策を策定します。》

《 その上で、私が目指すのは、新しい資本主義の実現です。我が国の未来を切り拓くための新しい経済社会のビジョンを示していきます。》

コロナについては、「国民に納得感を持ってもらえる丁寧な説明」という言葉がある以外、菅政権と何も変わらない。しかし、「丁寧な説明」とは何かが不明である。政府が決めたことを幾度も幾度も繰り返して話すことではないはずだ。「コロナ」を科学的に対処するのが、まず基本ではないか。国内や世界の科学者、医療従事者が自由に議論できる場を設け、何が最善の対処かを科学的に見極めることが重要である。

去年、今年の経済対策のように、一部の利権者(たとえば自民党関係者)にお金が落ちていくことを防ぐために どうしたらよいか、についての考えを示してほしい。

「新しい資本主義」というのは意味不明であるので、意味の分かる「丁寧な説明」がもっとも必要なところだ。

《 マクロ経済運営については、最大の目標であるデフレからの脱却を成し遂げます。そして、大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の推進に努めます。》

これって、アベノミクスそのものではないか。「デフレからの脱却」とは、安倍晋三が黒田晴彦を日銀総裁に引っぱり出し、異次元の金融緩和を行った、その目標ではなかったか。年金に大きくたよっている私は、いま、すべての生活物資の値上がりに困っている。「聞く力」をもつ岸田は、誰の声を聴いているのか。食品の値上がりを知っているのか。

《 世界では、健全な民主主義の中核である中間層を守り、気候変動などの地球規模の危機に備え、企業と政府が大胆な投資をしていく。そうした、新しい時代の資本主義経済を模索する動きが始まっています。》

「中間層を守り」ではなく、「貧困層の生活を上げ」ではないか。

また、「気候変動」だけが問題でない。行き場のない核廃棄物を生産しつづける原発もやめないといけない。ドイツは来年すべての原発を廃炉にする。ところが、岸田政権の閣僚や党役員は原発推進派で固められている。

「企業と政府が大胆な投資を」も意味不明である。何に投資するのか、また、企業が投資をするのを政府が後押しするというのか、意味がさっぱりわからない。

《 新しい資本主義を実現していく車の両輪は、成長戦略と分配戦略です。》

「分配」はこれまですべての野党がのべてきたことである。「消費税」は税をとりやすいかもしれないが、累進課税のような「再分配」機能がない。「分配戦略」というなら「消費税」をやめるべきである。また、株や金融商品による所得に対する税は、個人所得に合併されず、税率が低い。

それとも、これら税の問題に踏み込まず、岸田は、ベーシックインカム(最低限所得保障)を実行しようとするのか。

しかし、岸田のスピーチには、これらに対する言明がない。かわりにつぎを言う。

《 労働分配率向上に向けて賃上げを行う企業への税制支援を抜本強化します。》

いま、企業には税金が安くなる課税規則がいっぱいある。大企業ほど、それを使って納める税を安くしている。これ以上、経営者を甘やかす必要があるのか。それに、もともと、給料を高く払えば、コストが高くなるわけだから、払う税金が削減できるのである。だから、働いている人が正当な給料を求めて会社と交渉することを、政府が後押ししないと、企業内の再分配が成功しない。社員も非正規社員もだ。労働法を労働者の権利を守るよう改正する。

《 企業が、長期的な視点に立って、株主だけではなく、従業員も、取引先も恩恵を受けられる「三方良し」の経営を行うことが重要です。》

ここでは、「経営者」が主語から抜けている。

日本のビジネスでは、経営者が会社のお金を直接ネコババする。自分の会社を作ってそこに仕事をまわしたり、あるいは、取引先からキックバックを受け取る。日大の理事が特捜部から背任の疑いで取り締まりを受けているが、似たようなことが至るところで行われている。日産のゴーンも訴えられているが、ゴーンは日本人でないから、やり玉にあがったが、あれと同じような日本人の経営者がいっぱいいる。自民党は経営者に甘すぎる。もう少し、経営者の倫理を求める法律を作るべきである。

《 まず、成長戦略の第1の柱は、科学技術立国の実現です。学部や修士・博士課程の再編、拡充など科学技術分野の人材育成を促進します。》

そんなことは歴代の政権が言っている。「再編、拡充」はいままでイヤというほど行っている。問題は企業でやるような研究を大学に押し付けるようになっていることだ。企業でやれる研究、すなわち、成果がでればお金になる研究は、企業でやるべきである。大学でやる研究は、成果がでるかどうかわからないもの、成果の経済的価値が不明なものにすべきである。大学の研究の成果を、外部の企業人が評価するというのは、おかしいではないか。大学の研究は、日本人だけなく、韓国人や中国人や世界中の人に公開されるべきである。

《 自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を守り抜く覚悟です。》

というなら、大学の研究の自由を保障すべきである。日本学術会議の新会員の任命を菅義偉は拒否したが、そのことに関して反省の弁が少しもない。政府がお金を出しているから、政府のいうことを聞け、というのでは、結局、お金持ちのために、あるいは、強欲な経営者のために、近視眼の大学研究、大学教育を、頭の悪いヤーさん政治家が押しつけるだけになる。