猫じじいのブログ

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宮本太郎の『新自由主義と社会保障』ー岸田文雄のウソ

2021-10-21 23:00:01 | 経済思想

きのうの朝日新聞の宮本太郎の『新自由主義と社会保障』は問題の本質をついている。それに対し、きょうの飯田康之の『富裕な高齢者への増税 議論を』も、大沢真理の『下位層への再分配 道筋示して』も、論点がそれている。

岸田文雄も枝野幸雄も「成長と分配」に言及している。

私から見れば、「成長と分配」ではなく、経営者や株主(金融)が奪ったものを働く者に返せということであって、曖昧な「分配」の問題ではない。まして、それは、「成長」がなければ「分配」できないという問題ではない。 

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こう言うと、私がマルクス主義者であるように聞こえるかもしれないが、「お金儲けとは働くものから奪うことである」というのは、ビジネス界では昔から常識である。私は商店街に生まれてこの教えを叩きこまれている。

問題は所得の格差はどこから生まれるかである。ビジネスでお金が儲かるのは、買い手を騙すのではなく、ビジネスの規模を多くし、働くものから奪うからである。

子どものときから聞かされた話は、自分一人で焼き鳥屋をやっているなら、鶏の肉を切り、串にさし、焼くにさける労働時間の限界から、売ることのできる焼き鳥の量の限界が決まる。買い手を騙すというのにも限界がある。買い手のしっぺ返しが怖いからあまり騙せない。したがって、一人で働く儲けは たかが知れている。

人を雇って焼き鳥屋をやれば、売り上げは増える。チェイン店を経営すれば、もっと売り上げが増える。人を雇うからこそ、1臆円、10臆円、100臆円の所得が生まれる。

では、みんながそうできるのか。雇われるものと雇うものとの差異はどこからくるか。仕事のノウハウもあるが、一番重要なのは資本である。生産手段である。

私の住んでいるところに、昔フジテレビの『料理の鉄人』の挑戦者に出たじいさんが創作中華の店を出している。じいさんになって、約10年だが、 ようやく独立して小さな店を出して、それから、もうちょっと大きな店を出した。料理長をやらしても独立させないというのが、資本の論理である。

私はマルクスの著作を読む気がしないのは、彼は悪いのは社会制度であるとし、人間そのものが悪いことに目を向けないのである。多くの人間はとんでもない悪人である。資本主義を維持しようとする人間の底意地の悪さに怒るべきだと思っている。「新しい資本主義」とかいう岸田は大悪人である。

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宮本太郎は言う。

《思い返せば、アベノミクスでも『分配』が言われました。……しかし、株価が3万円台を回復しても、円安が進んで実質賃金が低下し、働き手への労働分配率は下落し続けています。この間、格差が拡大したことは はっきりしています。》

自民党の政策は、経営者や株主に優しすぎる。円安になれば、働く者の実質賃金が下がる。円安にしなくても、ものを売るのが経営者の腕ではないか。誰でもが、経営者になれないのは、資本がいるという、現在の資本主義社会の問題のためではないか。企業内で派閥争いに勝ったものが企業の経営者になる現状では、まともな企業経営なんてできっこない。傾いた製造業の会社には いつも自分の手柄だけを求める無能な経営トップが存在する。

だいじなことは、分配に期待することではなく、奪われたものを奪い返すことである。

宮本は、いまの日本には、安定就労層と福祉受給層に加え、新しい生活困難層がいるという。

《新しい生活困難層には非正規雇用、フリーランス、一人親世帯などが多く、老後の介護や自らのメンタルヘルス、子どもの発達障害など複合的な困難を抱える人も少なくありません。……コロナ禍の打撃もこの層に集中しており、どう支えるかが喫緊の課題です。》

《働けない人に限られていた福祉の給付を、働けても低所得の人たちに広げていくこと。さらに、安定就労層に限られていた就労の機会を、さまざまな困難を抱えている人にも広げることが必要です。》

さらに、岸田の「新自由主義から転換」を批判する。

《何を意味するか、意図的にぼかしているように見えます。》

《問われるべきは、アベノミクスからの転換か、継承か、ということをです。……アベノミクスは成長ありきで自助頼み、という点で『新自由主義的』だと思います。》

宮本は、財源問題で、福祉でお金が出ていくのだから、人々からお金をとらないといけないという。コロナ給付、減税というと、結局は、弱い人に出ていく福祉のお金が削られる。

ここで、誰からお金をとるかについて、宮本は明言していないが、私は奪われたものを取り返す、すなわち、人を雇う者、お金を貸す者から、お金を取り立てないといけないと思う。

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「新しい資本主義」ではなく、私たちは「資本主義」から決別すべきである。