悠山人の新古今

日本初→新古今集選、紫式部集全、和泉式部集全、各現代詠完了!
新領域→短歌写真&俳句写真!
日本初→源氏歌集全完了!

091 いつまでも忘れ

2005-10-24 05:00:00 | 新古今集

 『新古今和歌集』巻第十三恋歌三は、1149 から 1233 まで。
 夫道隆とのなれそめを詠む。百人一首(054)でおなじみ。
【略注】○今日を限りの=お逢いした今日が最後の(という気持ちの)。
    ○高階貴子=儀同三司母(ぎどうさんしのはは)が通用。この一首だけ入集。
【補説】評価。「移りやすい人間心理の機微を知るゆえに、恋が遂げられて命が燃えて
 いる今日という日のままで死んでしまえたら、どんなに幸福であろう、という。声調流麗。
 美しい愛の世界に永遠に生きたいという願いのせつなさが、哀艶な抒情にした。」(小
 学版)

090 思っても儚い

2005-10-23 00:42:00 | 新古今集

 片思いの嘆きの歌。「片思ひ」という言葉は、1143 の俊成の題詞にある。
【略注】○つれもなき人=つれない、冷淡な、冷たい恋人(男)。
    ○空蝉のむなしき=「空蝉の」は「むなしき」の枕詞。「<空蝉> の <う> に
     <憂し> の <う> をかけた。」(小学版)
    ○高倉=悠 007(07月05日条)既出。

088 あの世への恨みは

2005-10-21 05:30:00 | 新古今集

 いくら手紙を贈っても、「つれなかりける女」にしびれをきらして、「後の世まで恨み残るべきよし」と、ほとんど脅迫してやった。藤原成通の家集に所収というが、この男、もちろん高位貴族。相手の名は伝わらない。
【略注】○たまづさ=手紙(悠049/08月24日補説参照)。
☆「西行・定家・・・頷き酔う/古今集1100年 新古今集800年/俵万智」(きょうの朝日新聞)
から。
    唐衣ひもゆふぐれになる時は 返す返すも人は恋しき
         (古今集巻十一恋歌一・五一五よみ人知らず)
   ・・・「なんてまわりくどい!」と、ここで思ってしまったら、和歌を味わう楽しみを手放す
  ことになる。とはいえ私自身も、最近まで、この歌の魅力を理解していなかった。
   [それが「文学」高田祐彦論文]を読んで、掛詞という技巧に対する見方が、まるで変
  わってしまった。
 それに続けて評者は論文を引用する。「(衣の)紐(を)結う」のと「日も夕(暮れ)」は無関
係だが、「返す返す」が介在することによって、「やるせない心情がかたどられる」。(悠山
人要約)
 関連鼎談(佐佐木、俵、神作)が、29日、白山の東洋大で。参観自由。


087 都会から遠く

2005-10-20 06:05:00 | 新古今集

 信濃(既出)の贈歌
   人もまだふみ見ぬ山の岩がくれ 流るる水を袖に堰(せ)くかな
への西行の返歌である。
 巻十二(恋歌二)は 1081 から 1148 まで。
【略注】○人目思はで=人目を気にしないで。贈歌の「岩がくれ」、返歌の「岩
    のはざまに」の含意と合わせて、公然と。
    ○もの思(はばや)=ここでも「恋心」の意。「内面的自由に生きる人間
    の叫び。」(小学版)

086 教えてよ恋の

2005-10-19 03:20:00 | 新古今集

 この歌の本歌も『古今集』の「恋」に入っている。不安な恋の心境を詠む。
【略注】○しるべせよ=標(しるべ。案内)になってくれ。
    ○跡なき波=跡が残らない恋(というもの)の路。
    ○漕ぐ舟=自分の恋。「恋路の不安を訴えた象徴的歌境で、哀切な余韻」(小学版)。
    ○八重の潮風=遥か遠くまで重なる波の風。
    ○式子=悠 011(07月09日条)既出。


085 白波がなぎさに

2005-10-18 05:00:00 | 新古今集

 恋歌一で「もの思ふ」、ということで、恋が成就しない愚痴。
読み:間なく=まなく。
【略注】○あるかい=生きている甲斐。「なき(無き)」と「なぎさ(渚)」を掛ける。
    ○源景明(かげあきら)=兼光の子。長門守。この一首。


084 こっそりと恋の

2005-10-17 05:05:00 | 新古今集

 題詞に「忍恋(忍ぶる恋)」。一方で公然と手紙攻勢、他方で不倫懸想(けそう)。巧妙に使い分ける平安貴族たち。
【略注】○ひま=隙(ひま。すきま。油断)。「ひま」から「涙」が「漏れる」となる。
    ○藤原兼実=忠通の三男。慈円の兄。良経の父。五十代半ばで出家して、円証
    と号。