日々礼讃日日是好日!

まほろ界隈逍遥生々流転日乗記

秋、「大地の芸術祭」の里を巡る

2018年10月31日 | 日記

 深まる秋の季節、先週初めから三泊四日でことし四度目となる新潟へいってきた。これまでの記憶を辿ろう。

 前回、関越道を湯沢インターでおりたら、国道17号線をしばらく十日町方面へむかい、国道353号線と交わる地点を左折して十二峠を超え、十日町市域に入ったら、国道117号線を信州方面へ下り、しばらく走って飯山市郊外にある友人宅へと立ち寄ったのだった。
 東京生まれのその友人は、数年前に相方が古民家を求めてさきに田舎暮らしを始めていて、月一くらいで“通い夫”を続けているようで、その暮らしぶりを確かめたかったのだ。久しぶりに再会をはたし、ふたりとも元気そうで、この往復暮らしにもすっかり馴染んでいるようだった。たくさんの野菜をお土産にもらって、夕方薄暗くなるころに関田峠を越えて、新潟県上越市市域へと抜けるはじめてのルート。

 そしてこのたびの帰省は、実家の冬支度が目的だった。関越道を越後湯沢インターでおり、最初の峠をくだった353号線が117号線へとぶつかり、旧中里町と津南町の境である清津大橋を渡ったところからすぐのT字路で信濃川を縦断し、また峠をしばらく上って松之山をぬけ、池尻交差点でいつもの253号線へ合流するというルートをたどった。
 なんどかの異なった往復のおかげで、越後妻有と呼ばれる「大地の芸術祭」地域の約半分をようやく実感することができた。そこには、長野の奥地から日本海にむけて信濃川が流れ、その両岸の広大な山並、丘陵と里山のフィールドに、古代からの営々とした人々の暮らしが累積している、
 それにしても東京23区よりもはるかに広い地域(約760平方キロメートル)だけのことはある巨大なアートフィールドだ。でもこのスケールの前提は、2005年に予定されていた地方市町村合併を見据えた1996年にはじまる新潟県の地域政策のなかの広域活性化事業としてうまれたものだ。そして第一回芸術祭がスタートした2000年当初、いったい誰がこれほどの成果を予想できただろう!
 それ以来、三年おきの開催を重ねて十八年、それまで全国の中で前例のなかった現代アートによる“地域創生”の先鞭をつけた大成功例として、今に至ることになる。そのフィールドを巡る中で、これまでの蓄積と変化を実感しながら、過去の記憶を呼び覚ます道行でもあった。

 今年はとうとういうべきか、ようやく時期が熟してなのか、この地域随一の自然名所、清津峡観光トンネルが改修にあたってアート作品の場となり、会期中は空前の人出を呼んでいた。
 それが過ぎてまもなく迎える錦秋の季節をまえに、訪れた平日午後過ぎの駐車場は、行楽シーズンとはいえ満車の入庫待ち、なんと観光バスが七台も並んでいた。道中のスノーシェッド(雪よけ)や峠を越える際に出現する長いトンネルを抜ける視覚体験ですら、旅人を非日常の感覚にさせてくれる。

 ここの川岸の柱状節理の岸壁を眺めながら、ゆったりとかけ流しの温泉に浸かり、色づく自然植生のグラデーションを眼の保養とするひとときは、ほんとうに得難い痛快な気分だ。
 くわえてこのたびは、松之山から松代に入る池尻交差点脇にたつ、いつもは通り過ぎるだけだった、巨大なサイン塔「ステップ・イン・プラン」へ、はじめて立ち寄ってみた。ここは何度も眺めていたのだが、いってみてはじめてここが展望台を兼ねていることを体感して、夕暮れ前の西方が光るころだったせいか、極楽浄土から里山情景を俯瞰するような不思議な気持ちになる。

 さあ、もう小一時間も山中を走れば、なつかしい生家に到着する。その前のイントロダクションとしては、この情景はかなかないいものに違いないだろう。


 松之山と松代の境にたつサイン展望塔とポケットパーク、テキストデザインは浅葉克己。
「ステップ イン プラン」2003年(ジョン・メルテリング/オランダ)撮影:2018.10.22


 曇り空と人工池の中に描かれた青空の対比に何をみる? 十日町市キナーレ中庭のトリックアート。
「パリンプセスト」2018(レアンド・エルリッヒ/アルゼンチン)撮影:2018.9.22 


 「日本に向けて北を定めよ 74〝33`2〝」(リチャード・ウイルソン/UK)撮影:2018.9.22


秋深し 沿線秋桜華

2018年10月22日 | 日記
 秋が次第に深まってゆく。昨夜は旧暦九月の十三夜、東の空に上弦をすぎた月、ひときわ明るく輝くのはアルタイルだろうか。紅葉狩りの季節、まもなく霜降の候となる。今日からしばらくの帰省、故郷の新潟は、これから冷え込みが厳しくなるだろう。
 
 今朝はさわやかに腫れ上がって、すこし暖かくなるみたいだ。明日も晴れ予報、冬支度には貴重な晴れ間である。あちこちの庭先の柿の実がつややかに色づいて鮮やかだ。大山の山並が青青としてくっきりと連なって見える。
 私鉄線路わきにコスモスが揺れていた。青空と雲を区切る電線が五線譜のように走る。そのメロディにのって季節はすぎてゆく。