旅の二日目は曇り空の金沢をあとにして、JR北陸本線から湖西線を特急サンダーバード号で下り、琵琶湖の西側湖畔沿いに京都へと向かう。
途中の石川県内には松任、小松、加賀市大聖寺と平坦な日本海に面した平野の田園風景が続く。地図をみるとこのあたりの近郊には山中、山代などの有名温泉郷が点在していて、やがて雪の県境を越えた福井駅で停車する。ここは前日早朝まだ薄暗い中、金沢行の高速バスが停車したところなので、駅前の風景には覚えがある。駅の西方には金銅の福井大仏の姿が聳えていて、どことなく少し財力のある地方都市にあるような典型だ。続いて眼鏡フレーム産地として有名な鯖江から武生を過ぎると、京都府に近い北陸トンネルをくぐって敦賀に到着。そこからふたたび山間せまる県境越えのトンネルをぬけて、西浅井町の近江塩津で北陸本線とわかれて湖西線に入り、マキノ町あたりでようやく琵琶湖の北端に到達した。滋賀県近江は、「淡海国」とも書かれ、その異名が目の前の広大な琵琶湖からきていることが車窓の眺めからも次第に実感される。どんよりと曇った冬空のもと対岸の伊吹山地がうっすらと望めて、湖畔には今津の松並木が続く。じつにのどかな情景のなか湖上の視線の先には、ずんぐりした形の竹生島が望めて、対岸の町は長浜であるはずだ。なんだかすこし眠くなってきて、ふと気がつくと、窓側隣のひとは時々目をつむっているかのよう、その柔らかな横顔越しにたゆたう風景を眺めていると、静かに時が流れていってその風景が次第にゆっくりと身体に沁みていく、せつないくらい。
やがて線路は湖畔からすこし内陸に入ってきて、途中通過するホームの「安曇川」という文字が読めた。ふたたび湖畔に近づくと近江舞子のあたりで、リゾートホテルやロッジ、ヨットハーバーなどが目につき始め、車窓右手には白雪の比良山地が迫っている。お昼のお弁当に買った笹押し寿司を二人して食べ出したのは、このあたりだったろうか。ああ、これまで何度か日本地図を拡げながら夢想していたのは、じつにこの風景が眺めてみたかったからなのだ、ずっうと。金沢から京都へ北陸路で移動しながらのふたりの視線には、いったいなにが映っていくことだろう。それにしても、ふたたびここを再訪したときに、このあたりの湖畔周遊の道路を初夏か初秋あたりにドライブしたら、どんなに気持ちが解放されることだろうか。いつか必ず実現したい夢のひとつとして加えることにしよう。
しばらくすると琵琶湖大橋がみえてきたが、このあたり琵琶湖が最も対岸距離が近くなるところ、つまり瓢箪形のくびれの位置にあたる。雄琴をすぎると次第に街並みに俗っぽさが増し、大津周辺のビル街や高層マンションも視界に入ってくる。日吉大社のある坂本から右手に迫る山を見上げて、「ここが比叡山なのね」と隣のひとがつぶやく。数年前に研修で滞在したなつかしい唐崎を過ぎて、近江神宮と三井寺の間をぬけるように線路は逢坂をトンネルで通過する。山科盆地をへて京都駅に到着したのは、午後一時すぎ。すぐに在来線に乗り換えて、ひとまず宿泊先がある山科へと戻ることにした。
午後からは、いよいよ京都東山周遊と国際現代美術展2015見学のはじまり、スタートは昨年竣工したばかりの京都国立博物館平成知新館からである。
途中の石川県内には松任、小松、加賀市大聖寺と平坦な日本海に面した平野の田園風景が続く。地図をみるとこのあたりの近郊には山中、山代などの有名温泉郷が点在していて、やがて雪の県境を越えた福井駅で停車する。ここは前日早朝まだ薄暗い中、金沢行の高速バスが停車したところなので、駅前の風景には覚えがある。駅の西方には金銅の福井大仏の姿が聳えていて、どことなく少し財力のある地方都市にあるような典型だ。続いて眼鏡フレーム産地として有名な鯖江から武生を過ぎると、京都府に近い北陸トンネルをくぐって敦賀に到着。そこからふたたび山間せまる県境越えのトンネルをぬけて、西浅井町の近江塩津で北陸本線とわかれて湖西線に入り、マキノ町あたりでようやく琵琶湖の北端に到達した。滋賀県近江は、「淡海国」とも書かれ、その異名が目の前の広大な琵琶湖からきていることが車窓の眺めからも次第に実感される。どんよりと曇った冬空のもと対岸の伊吹山地がうっすらと望めて、湖畔には今津の松並木が続く。じつにのどかな情景のなか湖上の視線の先には、ずんぐりした形の竹生島が望めて、対岸の町は長浜であるはずだ。なんだかすこし眠くなってきて、ふと気がつくと、窓側隣のひとは時々目をつむっているかのよう、その柔らかな横顔越しにたゆたう風景を眺めていると、静かに時が流れていってその風景が次第にゆっくりと身体に沁みていく、せつないくらい。
やがて線路は湖畔からすこし内陸に入ってきて、途中通過するホームの「安曇川」という文字が読めた。ふたたび湖畔に近づくと近江舞子のあたりで、リゾートホテルやロッジ、ヨットハーバーなどが目につき始め、車窓右手には白雪の比良山地が迫っている。お昼のお弁当に買った笹押し寿司を二人して食べ出したのは、このあたりだったろうか。ああ、これまで何度か日本地図を拡げながら夢想していたのは、じつにこの風景が眺めてみたかったからなのだ、ずっうと。金沢から京都へ北陸路で移動しながらのふたりの視線には、いったいなにが映っていくことだろう。それにしても、ふたたびここを再訪したときに、このあたりの湖畔周遊の道路を初夏か初秋あたりにドライブしたら、どんなに気持ちが解放されることだろうか。いつか必ず実現したい夢のひとつとして加えることにしよう。
しばらくすると琵琶湖大橋がみえてきたが、このあたり琵琶湖が最も対岸距離が近くなるところ、つまり瓢箪形のくびれの位置にあたる。雄琴をすぎると次第に街並みに俗っぽさが増し、大津周辺のビル街や高層マンションも視界に入ってくる。日吉大社のある坂本から右手に迫る山を見上げて、「ここが比叡山なのね」と隣のひとがつぶやく。数年前に研修で滞在したなつかしい唐崎を過ぎて、近江神宮と三井寺の間をぬけるように線路は逢坂をトンネルで通過する。山科盆地をへて京都駅に到着したのは、午後一時すぎ。すぐに在来線に乗り換えて、ひとまず宿泊先がある山科へと戻ることにした。
午後からは、いよいよ京都東山周遊と国際現代美術展2015見学のはじまり、スタートは昨年竣工したばかりの京都国立博物館平成知新館からである。