横浜から夕刻、京浜急行で品川まで出て反対側ホームの車両に乗り換えると、そのまま都営浅草線に乗り入れていく。大門駅で下車して地上に上がり、増上寺へと至る通りをまっすぐ歩いていけば、右側に花岳院、常照院というふたつのお寺と隣り合わせで煉瓦造りの堂々とした、まるで小ぶりの慶応義塾大学図書館を連想させるような洋館が目につく。ここが有名な高級レストラン「クレッセント」(三日月の意味)だ。いつも外観をながめるだけでもちろん入ったことはないけども、その歴史も含めて気になる建物だ。その前の日比谷通りに沿って伸びた芝公園の楠の大木の黒いシルエットの先に増上寺の山門が見える。視線を右方向上にむけると、覆いかぶさるかのように鮮やかなオレンジ色にライトアップされた、東京タワーとのご対面!
増上寺とオリンピックの1964年に開業した東京プリンスホテルの間の通りを抜けていくと、見上げた先に東京タワーがせまってくる。かつて紅葉山と呼ばれた景勝地跡に、東京オリンピック前年の1963年に開業して今年が55周年にあたる。このあたりの景観は、江戸時代の面影から高度経済成長期の時代、とくにオリピックを契機に大きく変わったことが理解される。
展望券売場で900円の入場券を購入、地上150メートルの東京タワー大展望台に上ってみるのは本当に久しぶり。エレベーターを出ると平日夜なのに意外にも予想以上ににぎわっている。二層ある展望回廊は人工の光の海に囲まれた感じで、超高層ビルがここ20年くらいで随分増えたことに改めて驚く。浜松町の世界貿易センタービルは最上屋がライトアップされていてランドマークのままであるし、その先にレインボーブリッジのイルミネーションも見える。南西の方向には六本木ヒルズ、西方には虎の門ヒルズ、真近の神谷町にはオランダヒルズと、森ビルによる再開発高層ビルがやたらと目につくのだ。オランダ大使館横の芝給水地敷地はビルの谷間のなか、ブラックホールのように真っ暗だ。浄瑠璃寺と心光寺部分も静かな暗黒の世界。
タワーの足元を眺めると意外にも暗闇、つまり寺社、公園などの緑地が多いことに気づかされる。芝公園一帯はかつての景勝地の系譜をひいているのだろうし、なによりも川家菩提寺である浄土宗大本山の増上寺は戦前までこのあたりの広大な敷地を占めていて、東京プリンスホテルやプリンスタワーの敷地だって、西武資本に終戦後売却されるまではもともとは増上寺境内だったそうだ。
おもしろいのは、かつてテレビ東京(現東京タワースタジオ)があった建物のとなりの東京タワーボーリング跡地が純日本建築の数寄屋造りの高級料亭「とうふ屋うかい」に替わっていたこと。展望台から見下ろすと暗闇の中に日本料亭らしき建物屋根の連なりと庭園灯が点々とあって、東京タワーとの対照的なな組み合わせに驚かされる。
さて、本日の目的は単なる夜景観賞というわけではなくて、地上150メートルの都心夜景のなかでのライブがどんなものか、お気入りのアーティストの生演奏で実感してみたかったというわけで、大展望内のライブスぺース“Club333”での中村善郎ボサノヴァ演奏会を聴きにきたのでした。
久しぶりの善郎さん、共演の長岡敬二郎(パーカッション)とのシンプルな組み合わせ、これが素敵に素晴らしかった。ほとんどがボサノヴァのスタンダード、A.C.ジョビンの「メディテーション」などは文字通り、瞑想しているような夢見心地の世界で、150メートルの空中ライブにふさわしく浮遊しているような心持ちだった。ラストは「ブラジルの水彩画」と「イパネマの娘」でクローズ、素晴らしいライブパフォーマンスで、わざわざ来て本当によかったなあ。
帰りは、永井坂を飯倉交差点へ下る。右手に木造小屋組の聖オルバン教会の変わらない姿、設計はA.レーモンド。交差点のむこうには、『2001年宇宙の旅』にでてくるモノリスのような黒色の円筒形と下部煉瓦を組み合わせた異形のNOAノアビル(1974年15階建、設計:白井晟一)が墓標のようにすくっと立ち上がっている。地下鉄神谷町駅まではもう近い。
増上寺とオリンピックの1964年に開業した東京プリンスホテルの間の通りを抜けていくと、見上げた先に東京タワーがせまってくる。かつて紅葉山と呼ばれた景勝地跡に、東京オリンピック前年の1963年に開業して今年が55周年にあたる。このあたりの景観は、江戸時代の面影から高度経済成長期の時代、とくにオリピックを契機に大きく変わったことが理解される。
展望券売場で900円の入場券を購入、地上150メートルの東京タワー大展望台に上ってみるのは本当に久しぶり。エレベーターを出ると平日夜なのに意外にも予想以上ににぎわっている。二層ある展望回廊は人工の光の海に囲まれた感じで、超高層ビルがここ20年くらいで随分増えたことに改めて驚く。浜松町の世界貿易センタービルは最上屋がライトアップされていてランドマークのままであるし、その先にレインボーブリッジのイルミネーションも見える。南西の方向には六本木ヒルズ、西方には虎の門ヒルズ、真近の神谷町にはオランダヒルズと、森ビルによる再開発高層ビルがやたらと目につくのだ。オランダ大使館横の芝給水地敷地はビルの谷間のなか、ブラックホールのように真っ暗だ。浄瑠璃寺と心光寺部分も静かな暗黒の世界。
タワーの足元を眺めると意外にも暗闇、つまり寺社、公園などの緑地が多いことに気づかされる。芝公園一帯はかつての景勝地の系譜をひいているのだろうし、なによりも川家菩提寺である浄土宗大本山の増上寺は戦前までこのあたりの広大な敷地を占めていて、東京プリンスホテルやプリンスタワーの敷地だって、西武資本に終戦後売却されるまではもともとは増上寺境内だったそうだ。
おもしろいのは、かつてテレビ東京(現東京タワースタジオ)があった建物のとなりの東京タワーボーリング跡地が純日本建築の数寄屋造りの高級料亭「とうふ屋うかい」に替わっていたこと。展望台から見下ろすと暗闇の中に日本料亭らしき建物屋根の連なりと庭園灯が点々とあって、東京タワーとの対照的なな組み合わせに驚かされる。
さて、本日の目的は単なる夜景観賞というわけではなくて、地上150メートルの都心夜景のなかでのライブがどんなものか、お気入りのアーティストの生演奏で実感してみたかったというわけで、大展望内のライブスぺース“Club333”での中村善郎ボサノヴァ演奏会を聴きにきたのでした。
久しぶりの善郎さん、共演の長岡敬二郎(パーカッション)とのシンプルな組み合わせ、これが素敵に素晴らしかった。ほとんどがボサノヴァのスタンダード、A.C.ジョビンの「メディテーション」などは文字通り、瞑想しているような夢見心地の世界で、150メートルの空中ライブにふさわしく浮遊しているような心持ちだった。ラストは「ブラジルの水彩画」と「イパネマの娘」でクローズ、素晴らしいライブパフォーマンスで、わざわざ来て本当によかったなあ。
帰りは、永井坂を飯倉交差点へ下る。右手に木造小屋組の聖オルバン教会の変わらない姿、設計はA.レーモンド。交差点のむこうには、『2001年宇宙の旅』にでてくるモノリスのような黒色の円筒形と下部煉瓦を組み合わせた異形のNOAノアビル(1974年15階建、設計:白井晟一)が墓標のようにすくっと立ち上がっている。地下鉄神谷町駅まではもう近い。