Web2.0(笑)の広告学 いまアメリカで「トヨタを信じてるよ」の声が上がる~トヨタのソーシャルメディア対応に学ぶ
一連のリコール問題の影響で、トヨタは2月のアメリカでの新車販売台数が、前年同月比8.7%減となり、日米大手6社で唯一前年実績を割り込み、販売シェアが12.8%になるなど、苦境が続いています。
トヨタに対しては、技術的な問題に加えて、初期段階のコミュニケーションミスが指摘されています。しかし、Facebook、Twitter、ブログなどのソーシャルメディアにおける危機対応に関しては、一定の評価を与える記事がアメリカ最大の広告業界誌Advertising Age誌に掲載されていました(参考記事:「The Cult of Toyota」Ad Age誌)。
危機におけるソーシャルメディアへの対応、というと「情報操作?」といった印象を持つ人もいるかもしれません。しかし、この連載でも何度か触れているように、誰もが自由に発言できて、個々の発言がつながって、大きな影響力になりうるソーシャルメディアにおいては、むしろ「コントロール」という発想のほうが危険です。
トヨタの対応はその逆で、ソーシャルメディアの声に耳を傾け、発言をしたい人に場所を提供する、というものです。
そして、それが、現在の苦しい環境下でも、一定の成果を上げているのです。
Facebook、Twitter、YouTube、様々なソーシャルメディアにアンテナを立てる
トヨタは、今回の危機の中、アメリカの消費者と対話をしていく上で、主要なソーシャルメディア・プラットフォームを網羅するような形でコミュニケーションの回路を構築しています。
たとえば、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の最大手Facebook上のTOYOTAファンページの登録者は現在8万1000人を超えていますが、1月中旬には7万1000人程度だったので、危機の最中に1万人も登録者が増えたことになります。
もちろん、1万人のファンページ登録者増加の一方で、今回のことでトヨタに対してネガティブな感情を持つようになった人が多数存在することは否定できません。しかし、メディアの報道や、議員の発言が、トヨタ批判に塗りつくされる中で、一般のアメリカ人によるサポートの声が、ソーシャルメディアに集まっていることは、非常に意味があることだと思います。
この増加がなにを意味するのか。ここに来てトヨタファンの数が急に増えている、ということではなく、既にトヨタに対してポジティブな感情を抱いてきた、しかしことさらそのことを外部に対して表明してこなかった人たちが、トヨタの難局にあって、対外的にサポート表明してくれている、ということなんだと思います。
英語にも「Friend in need is friend indeed.」という、困った時の友こそ真の友、という言葉があります。これは、人間同士の友情関係だけでなく、ブランドと顧客という関係においてもまた、非常に価値のあることです。
トヨタのソーシャルメディア対応は、Facebookだけではありません。
Twitter上でのトヨタに関する発言を集めて表示する「TOYOTA Conversation」を開設したり、YouTube上のTOYOTA USAのチャンネルで映像コンテンツを配信するなど、さまざまなプラットフォームで展開しています。
アメリカの企業市民としての実績を強調
YouTubeで流しているトヨタのテレビCMを見て「アメリカの企業市民としての活動があるからこそできるコミュニケーションだな」と思いました。
この60秒の映像で強調されているのは、アメリカでの歴史と、アメリカ人の従業員たち、そして再生への誓いと行動です。