恩師のご著書「講演集」より
講演集、 二
出せば入る法則――原因結果の法則
先の続き・・・
私はこの正法にご縁をいただく前から、
いろいろ不思議な体験をさせていただきまいたが、
商売の上でも自分が儲けようとしてはいけないということを知っております。
人さまに儲けてもらう、かといって自分が損をしたら商売になりません。
人さまにご奉仕させていただくことをモットーにさせてもらいました。
関東のある所に本社のある貸布団業界の大手会社にご縁を頂きました。
毛布業界では最低四カ月の手形、長くて六カ月、
或いはお産手形と言いまして十カ月の手形もあります。
そんな時代に、そのお得意さんから現金で取引してやると言ってもらったのですね。
こんな有難いことはありません。
業界では絶対といっていいような大手のお得意さんが、
ひょいと舞い込んできて下さったのです。
まさに天上界から与えられたご縁です。
その時私はこれを全部儲けたら申し訳ないと思いました。
その後たった一度だけ東京の本社へ行きました。
受付の方に「大阪から参りました」と言いますと、「どうぞ」と案内して下さいました。
オフイスの机が並んでいるそのずっと奥の、社長の部屋へ行くまでの途中、
事務を取っている方たちが立って礼をして迎えて下さるのです。
「へえー、私のような者が来ても皆がお辞儀をしてくれるのだなあ」と思って社長室にはいりましたら、
案内してくれた人が社長さんだったのですね。
私に頭を下げてくれたのではなくて、社長さんにお辞儀をしていたのです。
よく考えてみると、私に頭を下げてくれるはずはありません(笑い)。
社長さん、会長さんとお見えになりまして、いろいろ世間話をしましたあと、
では商売の話をしましょうかということで、「条件はどういうことですか」と聞かれたのですね。
私は、「地元の問屋さんに入れさせていただいている相場で買っていただいたら結構です。
一銭も余計には要りません。
しかし送料、荷造り料はお宅さんで持って下さい、それ以外は要りません」と、
話をさせてもらいました。
「分かりました。では取引はして下さい」と、お話は何と二、三分ほどで済んでしまいました。
その後二十五、六年お付き合いさせてもらいました間、ずっと現金で買っていただきました。
私は何とか会社にご奉仕させてもらわなくてはいけないと思ったのですけど、
受け取っていただけないのです。
で、仕入れ部長さんが私のところに来て下さるので、
「うちは、これで儲けさせてもらっています。私だけが儲けては申し訳ないですから、
仕入れ部長さんに私の感謝の気持ちとして、
売上金額の二パーセントを還元させていただきます」と申し出たのです。
これは一億としますと、その二パーセントはいい小遣いになります。
盆と正月に分けまして、この半期の売上の二パーセントを仕入れ部長さんに送っていたのです。
そうしますと、その会社に大きなメ―カーから売りにきますね、ところが絶対に買わない。
「いや、うちはもう専属の製造所がありますから結構です」といって、
私のところより歩のいい話を持っていこうが、どんな大きなメーカーから行こうが、
よそからは絶対に買わないで、そしてほかに必要なものまで、私のところに注文があるのですね。
私は注文を頂いたらよそでそれを買ってきて送る、それで又何パーセントか儲けさせていただくという具合で、
相手に儲けて喜んでもらうことによって、
自分を守ってもらうということと必要以上に儲けさせていただくことを、
身を持って体験させてもらいました。
今日、こうして結構に生きさせてもらいますのも、商売を通して「こんなにぎょうさん
儲けさせてもらっていいのかなあ」という程儲けさせてもらったお陰です。
とはいっても、何億と儲けたわけではありません。
足ることを知った儲けです(笑い)。
~ 感謝・合掌 ~