~ 恩師の「心行の解説」下巻より ~
講演 九
「己の肉体が苦しめば心脳乱しわが身楽なれば
情欲に愛着す。苦楽はともに正道成就の根本に非ず」
先の続き・・・
静かに過去を振り返った時、「妻は今、何をしているだろうか、
城で共に暮らしていた時はこのようなこともあったなあ」という思いが
湧いて、もとの生活に自分の心が向きそうになるのですが、
これは思って当然です。
しかしお釈迦様は「悪魔よ去れ」と、
自分の心の中の魔を追い払われたのです。
そして、あの偉大な悟りをお開きになりました時、
「私の悟った教えは、世の常に逆らうものである。
逆らうのが真理であった」とおっしゃっています。
世の常とは、人のこの世的な常識です。
「出すのは嫌い、貰うのは大好き」というのは世の常です。
しかし出さなければ入ってこないということを
お釈迦様は気付かれたのですね。
原因、結果の法則をお悟りになったのですが、
普通の我々凡夫は、腹が立つ時には怒らなくてはしょうがない、
愚痴が言いたい時は愚痴を言ったらいいと思うわけです。
この前、三十過ぎの女性の方が、
ふとしたご縁で尋ねてこられて、この方は
ああいえばこう言うし、こう言えばああ言うという方で、
絶対にうんと言われません。
お顔を見れば苦しみをいっぱい背負った顔をしています。
「あなたは幸せにならなくてはいけません」と言うと、
「いや、私は幸せです」
「しかし、あなたの顔は幸せとは違います。
心の中にいっぱい苦しみを持っています」「そんなこと、
あなたに分かるはずはありません」「いや、よく分かります」
こういう具合で、何を言っても受け入れません。
この方はヨガの有名は先生についておられ、二十代の頃、
高橋信次先生のご講演を何回も聞いているのです。
その後ヨガの先生に質問したそうです。「腹が立ったり、
愚痴を言ったり、貪欲になったりしてはいけないと、
信次先生に学びましたが、
そのように思ってはいけないのですか」そうすると、
ヨガの先生が「馬鹿野郎」と怒鳴ったそうです。
「人間だったら腹を立てて、愚痴も言え、貪欲になれ」と
言ったのですね。
そして「大勢の前で馬鹿野郎と怒鳴られて、
わしの言うことが気に入らなかったら、わしを恨め、憎め」と
言ったそうです。
まあ、えらい先生があったものだと思います。
その方はもう亡くなっておられますが、有名なヨガの先生です。