2010年の秋シーズン、TBS系列の金曜夜10時「金曜ドラマ」枠で全10話が放映された刑事ドラマ。'12年と'13年にスペシャルドラマが2本、劇場版も2本公開され、'18年にはスピンオフのWebドラマも配信されてます。
脚本=西荻弓絵、演出=堤 幸彦、プロデュース=植田博樹と、'99年に中谷美紀&渡部篤郎の主演によりヒットした『ケイゾク』のブレーンが再結集、タイトルも当初は『ケイゾク2』とアナウンスされ、実際に竜 雷太さんと徳井 優さんは『ケイゾク』と同じキャラクターで出演されてます。
が、コメディ仕立てのサイコ・サスペンスだった『ケイゾク』に対し、今回の『SPEC』は超能力を真正面から扱うSFアクション物の色合いが濃く、ストーリー上の繋がりはほとんどありません。(繋がりを匂わせる描写はあったけど、マニア向けのサービスに過ぎないでしょう)
タイトルにある「未詳事件特別対策係」とは、捜査一課が手に負えない……というより相手にしない超常現象絡みの事件を引き受ける窓際部署で、主人公はそこに所属するIQ201の天才捜査官=当麻紗綾(戸田恵梨香)。そしてSITから左遷されて来たぶっきらぼうな元小隊長=瀬文(加瀬 亮)とコンビを組むことになる構図は『ケイゾク』と同じで、二人を見守る野々村係長(竜 雷太)も相変わらず雅ちゃん(有村架純)との不倫を続けてますw(こんなに心底から楽しそうなゴリさんは、よそじゃ見られませんw)
ほか、スペックホルダー(超能力者)たちを束ねる謎の少年=ニノマエ(神木隆之介)、スペックホルダーを利用して何やら企む公安の特務部長(椎名桔平)、そして福田沙紀、城田 優、安田 顕、田中哲司、大森南朋、真野恵里菜といった面々扮するスペックホルダーたちが絡んできます。
放映当時、私は堤幸彦ワールドならではの下らない小ネタやパロディを楽しみつつも、エスパーなら犯罪行為はおろか証拠隠滅やアリバイ工作などやりたい放題で、捜査も謎解きも関係無いやん!って、刑事ドラマにSFを持ち込むことに関しては否定的に捉えてました。
だけど今にして思えば、ただ毎回突っ立って殺人事件の謎を解くばかりの刑事ドラマが不満なら、謎解きもクソもない『SPEC』みたいなドラマこそ大歓迎すべきだったのかも知れません。すっかり謎解き番組一色になっちゃった今なら手放しで絶賛するしかないでしょう。
ゴールデンタイムの連ドラにSFはご法度みたいな空気が蔓延する中、この企画を実現させたパイオニア精神がまず素晴らしいし、『ケイゾク』と同じようにカルト的な人気を集め、シリーズを継続させた手腕もリスペクトあるのみです。
ただし、あくまで個人的な好みで言えば、思わせぶりに「謎」を振り撒くあざといドラマ創りに、私はまったく共感できません。作者が頭の中で勝手にでっち上げた真相なんか、ホント心底どーでもいい。
だからこの『SPEC』もストーリーが佳境に入れば入るほど興味を失い、映画版はいっさい観てません。(テレビで観たかも知れないけど憶えてないw)
そういうところも『ケイゾク』の時と同じです。あくまで刑事ドラマの枠内ギリギリのところで遊んでた、TVシリーズ中盤あたりまでが(私としては)一番面白かったです。
そう、私が常に求めてるのは面白い刑事ドラマであり、斬新で刺激的な刑事ドラマなんです。いくら斬新で面白くても「刑事ドラマ」の枠から逸脱しちゃうとつまんない。そういう意味じゃ『SPEC』は『うぬぼれ刑事』と同じカテゴリーですw
だからやっぱり手放しじゃ絶賛できないんだけど、誰も枠を壊そうとしない今となっては眩しい存在。ここらでまた、『ケイゾク』チームによる第三の刑事ドラマ、斬新だけど決して逸脱しない刑事ドラマに期待したいところです。(思えばムチャな注文なのかも知れませんw だからこそ価値がある!)
PS. インテリヤンキー・当麻捜査官に扮した戸田恵梨香さんの、なりふり構わぬ三枚目演技は絶品!(人の話を聞きながら鼻くそをほじり、しまいには食べてしまう!w) それだけで充分に観る価値アリです。