古希からの田舎暮らし

古希近くなってから都市近郊に小さな家を建てて移り住む。田舎にとけこんでゆく日々の暮らしぶりをお伝えします。

吉村昭『帰艦せず』を読みました。

2022年01月31日 02時51分01秒 | 古希からの田舎暮らし
 吉村昭の短編小説集『帰艦ぜず』を図書館で借りて読みました。重い気持ちです。
 吉村昭は思いつきでフィクションを書くような作家ではありません。自分で納得のいくまで取材して、登場人物が自分の中で立ち上がるのを受けとめて書く作家です。それだけにあの戦争で苦しんだ人たちの「生きざま」が胸にこたえます。
『帰艦せず』は「戦時中に軍艦に乗っていた兵士に、外出許可が出て、期限までに帰艦できなかった」物語です。
 ぼくはあの戦争での「下級兵士の戦記/苦労した話/いじめられた兵士の体験談」などをかなり読んできました。江崎誠致の『ルソンの谷間』/結城昌治『軍記はためく下に』/水木しげるの戦争体験を描いた本/いろんな人の書いた『インパール戦記』/伊藤圭一の中国戦線・戦記/ペリリュー戦記など、いっぱい。主に読んだのは、兵士自身の体験です。
『帰艦せず』は兵士の親や身内の「つらい思い」を語る話です。
 戦地での、兵士自身の苦しみや痛みは大変です。でもそれは兵士ひとりの問題でない。兵士には親があり、兄弟や身内があり、生まれ育った土地がある。兵士は降ったように出現したのではなく、親から生まれ、子どもとして生き、成長して兵士になったのです。
 あの戦争で日本人は310万人死んだ。その数字のうしろに、親や兄弟や身内がいる。その「うしろ」の「つらい日々」に思いをいたす。それが不十分だった。という思いです。死んだ人はつらかったでしょう。あとにのこって生きた人たちもつらかった。そのつらさに思いをいたす。気力がおとろえていますが、こころがけます。
 
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