2014年に亡くなったロビン・ウィリアムズ主演の映画、「レナードの朝」(1990年)を観ました。
研究畑出身なのに、精神科の病院に雇われて働くことになる医師役にロビン・ウィリアムズ。
30年間も意志の疎通ができず、体も石化したようにしか動かない、当時「眠り病」と呼ばれた嗜眠性脳炎の患者、レナード役にロバート・デ・ニーロ。
実話をもとに映画向けにフィクションも交えながら映像化した作品です。
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
発売日 : 2010-11-24
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もう古典の部類に入る名作ですが、病気に対する偏見と無理解がいかに個人の尊厳を傷つけてきたか、医療とは、そして人間とは何かを見る者に訴えてくる映画。
ハンセン病の例を出すまでもなく、現在でも認知症やうつ病、統合失調症などへの理解はまだまだ不充分なところがありますよね。
映画の中でも、投げたボールを患者たちが受け取れることを発見したロビン・ウィリアムズに対して、古株の医師たちは「ただの反射」で済ませようとします。
映画の中の描写は医学的に正しくないところもありますが、患者の一人が部屋のある地点までは歩いて行けるのに、急に立ち止まり動かなくなってしまう理由を「床の模様がここでなくなっている」からだとロビン・ウィリアムズが気づき、看護婦と二人で床に模様の続きを描くと、患者はその模様の続くところまで歩いていくというシーン。
これも患者にはちゃんと行動する理由があるのに、それを伝える手段がないため周りに理解されない悲劇。
認知症で徘徊をする人も、その人なりの理由がちゃんとあるっていいますしね。
ロビン・ウィリアムズの演技も素晴らしいのですが、この映画の見所は何と言ってもレナード役のロバート・デ・ニーロ。
前半のしゃべれない動けない状態を表現した演技もいいのですが、後半、回復のきざしを初めて見せる夜のテーブルのシーンは本当に何ともいえない空気を生み出していて圧巻でした。
患者の変化は、周りの医師や看護師たちの変化へと波及していきます。
「カメラを早く。全部撮れ。学べ! 学べ!」
自分の症状が再び悪化し、痙攣の発作に襲われたレナードが苦しみながら叫びます。
自分の姿を記録しろ。
そこからこの病を治す手がかりを学んでくれ。
学べ。俺の苦しんでいる姿から学べ!
人間の愚かさの大半は、無理解からきているのかも知れませんね。
そして迎える結末。
人間関係が苦手で、女性にも奥手だったロビン・ウィリアムズ(演じる医師)が、一緒に戦ってきた看護婦の女性に一言声をかけます。
それが前半のセリフとつながっていて、いい味を加えています。
とてもいい映画でした。
余談になりますが、日本の青年が13歳のときに書いた『自閉症の僕が跳びはねる理由』(2007年出版)という本が、英訳されて世界で次々と出版されている、ということを少し前になりますがNHKの番組で知りました。
それまで、自閉症の子どもを持つ親たちは、なぜ自分の子どもが奇声を発するのか、床に頭を打ちつけるのかわからず、コミュニケーションを諦めていたといいます。
それがこの本のおかげでその理由がわかり、自分の子どもをようやく理解できるようになった、と紹介されていました。
この青年は、言葉での会話が困難なため、母親が作成した文字盤や筆談でコミュニケーションをとっているそうです。
まだまだ人間は学ばなきゃいけませんね。
エスコアール
発売日 : 2007-02-28
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