老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

306;誕生日前夜

2017-08-16 17:00:08 | 老い楽の詩
誕生日前夜 

明日65歳になる
嬉しいのか それとも人生の節目なのか
介護保険法では老人の仲間入りになる
介護保険被保険者証が郵便で届くであろう
それに私の場合
慢性腎不全による身体障害者1級であることから
医療保険は健康保険から後期高齢者医療保険証に変わる
3割自己負担から1割自己負担となり
大いに助かる


それよりも
64歳最後の日から明日は65歳になっても
世の中も私の怠惰な生活も変わりはしないのだが
私の心のなかでは
65歳 老いに入るということ
介護の仕事に従事している「いま」
老いや介護の問題(テーマ)は
他人事ではなく私事にもなるからである

最近の私は
転ぶことも増え
下肢の筋力だけでなく思考能力も集中力も衰えてきた
嗚呼老いが来たのだな
これから老いと向かい
残り少なくなってきた時間
老いとの向かいあいは死を意識することにもなる
あと何年生きられるか、と
引き算の人生になってしまう
明日のこと(死のこと)を悩むより
今日(いま)をどう生きるか
老いを迎える前夜 そのことに改めて気づかされた
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244;片道切符

2017-07-15 04:28:44 | 老い楽の詩
片道切符

人生は片道切符
在来線で行くか
新幹線で行くか
終着駅は同じ


齢を重ねるほど
時間の流れを早く感じてしまうだけに
老いを過ごし往く時は
鈍行列車の窓から
各駅の風景を楽しむとしようか
あせらずとも
行き先は決まっている




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243;石のぬくもり

2017-07-14 12:19:14 | 老い楽の詩
石のぬくもり

左手は握り拳の如く曲がったまま拘縮
両膝は「く」の字に曲がり脚を伸ばせない
ひとりで寝返りも行えず
染みついた天井を一日中眺めている

握りしめた左手の指を解き解し
掌を握り 言葉のかわりに握り返す
老人のぬくもりが微かに伝わってくる

老いた妻は仕事に出かけ
老人はベッド上で留守番
黒電話は鳴ることもなく
じっと耐えながら寝ている

路傍の石も動くこともできず
ジッと地面と空を見つめている
小石を掌にのせ
小石を握ってみた
小石にもぬくもりが伝わっていった

ジッと寝ている
老人の体と心は寂しく
石のように冷たい
温かいタオルで体を拭きながら
癒しの言葉をかけていく
老人にもぬくもりが伝わっていった

路傍に咲いていたマーガレットを一輪
老人の枕元に飾ってきた
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242;何を遺すか

2017-07-14 01:12:43 | 老い楽の詩
何を遺すか

「死んだ男の残したものは
ひとりの妻とひとりの子ども」
(谷川俊太郎 詩『死んだ男の残したものは』の冒頭)
死んだときの私は何を残せるのか
いま死んでも私は何も残せるものはない
何を遺すか

内村鑑三が著した名著
『後世への最大遺物』をもう一度紐解き
何を遺すのか 
自問自答していきたい

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236;巣立ちと空蝉

2017-07-11 11:22:40 | 老い楽の詩
巣立ちと空蝉 

巣立ちも空蝉も「空(殻)」になる

親鳥が飛ぶのを見て、 
「この空を飛べたなら」(中島みゆき)と思っていた雛(ひな)は、
立派に成長して巣離れをし、
大空に羽ばたいていく。

この雛の巣立ちをみて、
学校を卒業して社会に出ていくことを
巣立ちと呼ばれ祝福される。
飛び立った鳥は、
巣に帰らず「空き巣」になる。

蝉の抜け殻(空)は、軽く風が吹けば飛ぶような儚い存在である。
古語では蝉の抜け殻を空蝉と言う。
蝉が抜けた殻は空洞になることから
中身がなくなり虚ろになる。
だから空蝉と呼ばれるのであろう。

意味は違うが、巣立ちも空蝉も、
空になる点で同じなのかもしれない。

堀内孝雄の「空蝉の家」は、
生家に住む人がなく「空き家」となった寂しさを
空蝉になぞらえて歌っている。

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235;巣立と旅立

2017-07-11 08:15:38 | 老い楽の詩
巣立と旅立 

子どもは
社会への巣立
老人は
死への旅立ち 
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228;喜楽に生きてみようか

2017-07-07 14:57:05 | 老い楽の詩
夕映えは老い楽の時刻か
老い始め
老い逝くまで
その老いの時間は
楽よりも苦の方が多く待ち受けているのか
老いは喪失の時とも言われる
仕事を失い
年金もそう多くはなく
生活基盤を失う
病いも抱え
手足の自由を失い
記憶のピースも失い
自分が誰だかわからなくなる
「私は誰だ、あなたは何者だ」と
同居している妻の名前だけでなく顔さえも忘れてしまう
多くの苦があっても
束の間だけ、喜びや感動、笑いあえる「楽」があれば幸せ



暫くの間 お休みを頂きありがとうございました
「桜梅桃李」従来通りご愛読よろしくお願いいたします
再開のきっかけが欲しく 七夕の日にしました
これからは「喜楽」に生きてみようか
そう思っています
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