1823 胎内から歩くまでのプロセス
にんげんは、この地上に二本足で立ち、歩きそして手を使うことで
大きな自由を獲得した。
若い親やジイババになった祖父母は
赤ん坊が「仰向け」から「寝返り」ができると歓喜の声を上げる。
「寝返り」ができるようになると
小さな人間(赤ん坊)は、顎あげ、次に胸をあげ辺りを見まわす。
入院し大きな手術施行し寝返りもできずにいる患者、自力で寝返りができない要介護5の老人は、
目に映るものは天井だけ。
それが、寝返りができ、胸をあげ、首を回し部屋の風景を眺め見る。
物を立体的な関係で捉えるようになる。
寝返りができた力は、うつ伏せから手、腕そして足を使い「四つ這い」をすると、
小さな人間はの行動(世界)は大きく広がる。
興味津々な物が目に映り、「あれは、何だろう」、と早くそこへ行きたくて
「高這い」になる。
図「運動発達の順序」を見ると
小さな人間は、目安として9ヵ月になると家具(椅子)につかまっていられる(つかまり立ち)ができる。
10ヵ月には「這い這い」ができる、と説明している。
しかし、なかには「這い這い」ができ、次に這い這いから椅子の座面に手をつき「立ち上がり」の動作を行うこともあり、
発達の順序が逆になることもある。
老いてくると体力や筋力が落ち、床(畳)から容易に立ちあがれなくなる。
床から立ち上がらせるとき、介護者は決して老人の両手を握り引っ張り上げてはならない。
老人の全体重を持ち上げることになり、肩が外れてしまう恐れがある。
介護者も引っ張りあげるのは大変。
介護は力ずくで行うものではない。
小さな人間が行ったように
這い這いから椅子の座面に手を乗せ、加重し手を押し上げ、立ち上がり、立つ。
床よりも椅子(介護用ベッド)に座り、介助バー(移動バー或いは支援バー、とも呼ばれている。介護保険、福祉貸与サービス)につかまると更に容易に立ち上がりができ、安定した立位保持ができる。
担当させて頂いている85才のババ様(要介護5)は、
両足の筋力は萎え立つことも歩くことができない。
「歩けない」から車イスに乗せて移動する、という考えになりやすい。
青空の家デイサービスは、ホールからトイレや洗面所までの移動は四つ這いにより行わせている。
(四つ這いを終えた後は、手指を拭き、消毒液により消毒している)
自宅では一人暮らし生活をしている。
毎日朝夕ヘルパーが支援に訪れる。
自宅のなかは四つ這いで移動している。
自宅で四つ這いで移動しているのに、デイサービスで車イスを使用すると
四つ這いの機会を減らすことで
彼女の両手両足の筋力は落ちてしまい
寝たきりの誘因、要因の引きがねとなってしまう。
いま老人が持っている力を使うあるいは引き出すことにより
生活のなかで「できる」ことを行なわせていくことが、生きる力につながっていく。