老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

119;海が見える家に帰りたい

2017-05-21 05:32:38 | 老いの光影
ご訪問いただき、ありがとうございます

その婆さんの名前は 沢井静さん
静さんは、人生の悲哀さを語ってくれた。
「人間、いろんなことがあったかと思うと、
昨日は涙が出てどうしようもなかった。
夫は寝たきりになってから口もきかないから、
黙っているだけで・・・・・。
わたしは88歳、夫は93歳。
いつまでもここ(老人保健施設)にいてもしょうがない。
海が見える家に帰りたい。」
と最後にポツリと話す。

その後、彼女の口から一度も
「海が見える家に帰りたい」
と聞いたことがない。
彼女自身は認知症があり
老人保健施設の二人部屋で
両手両足が拘縮してしまった夫を
海が見える家で介護をすることは、
もう難しいことを体で理解していた。
家に帰ることを諦めた彼女。
一度は確かに、
「海が見える家に帰りたい」
と胸のうちを聞いてもらいたかったのかもしれない。
彼女にとって約半世紀
夫とともに歩んできた海の見える町
人生の思い出が重なる海が見える家


最新の画像もっと見る

コメントを投稿