老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

老いながら生きる

2021-07-23 10:55:05 | 老いの光影 第7章 「老人のねがい」
1752 老いながら生きる

             「春の阿武隈川」

人は生きたように老い
老いたように死ぬ

川底に生きる石たちは
同じ石はひとつもない

彩り飾る紅葉たちは
同じ葉はふたつともない

老いても生きる老人もいれば
ただ「生きている」老人もいる

いざりながらひとりくらしをしている婆さんがいる
要介護5の認定だろうが そんなのは関係ない
ショートステイよりも 朽ちた陽のあたらない家であっても
我家がいちばん

歩けなくて不自由だけれど
我家は自由気儘に過ごせる自由がある

ヘルパーの世話になってはいるが
この家の主は自分なのだ
動けなくなるまでここで生きる

ショートステイを長く利用する
どの老人もそうだとは言わないが
生きる力を失せていく婆さんがいた

その婆さんもひとり暮らし
杖をつけば何とか歩ける要介護3の婆さんだった
玄関、廊下、トイレ、浴室などの家のあちこちに手すりなどをつけ住宅改修をした
「家に帰りたくない」「施設(ショートステイ)に居たい」、という

多くの老人は施設から家に帰りたいと願うはずなのに
その婆さんは施設に居たい、と・・・・

その婆さんは家に帰ってきた
毎日ヘルパーがはいり
食事を作っても
食べたり食べなかったりして
冷蔵庫のなかでおかずは傷み 
ゴミ箱に捨てられた

居間から冷蔵庫まで取りにいくのが面倒
薬を飲むの億劫
生きるのが嫌になり死にたいわけでもない

何もせずに生きているのがいい

心配なので週5日 デイサービスのプランを作った
本人は行きたくない(生きたくないのか どっちなんだろう)

ショートステイはいいところだ、と彼女は呟く
何故いいのか
それは朝になれば起こしてくれる
三度の食事は上げ膳据え膳
何もしなくても食事は用意される
薬だって 食事が終われば
薬が運ばれ水まで用意してくれる

その婆さんは家よりもショートステイは極楽だ

家に居ても何もしなかった婆さんの家は
台所も居間も寝室も
物とゴミで溢れ散乱していた
椅子から立ち上がり物を取りに行くのも億劫


婆さんの足元に 万能マジックハンドが置いてあった
これだと歩かなくてもすむが限界がある

その点ヘルパーは便利である
ヘルパーは家政婦と思い
頼めば 物をとってきてくれる

ショートステイは何もしなくてすむ
万能ケアと思っている

老いて生きる力とは
考え悩んでしまう

自分も老いの範疇にはいる
老いて生きる
大変な毎日
仕事の関係で
運行管理者の資格を取得せねばならない
運行管理(旅客)基礎講習を9月に受け
年明けに運行管理者試験に挑む

畑違いの資格試験 合格率30%の壁を突破できるか
安易に70歳の男性に通院等乗降介助をしよう、と声をかけ
いま介護職員初任者研修の受講を始めた70歳の男性

言ってしまった責任もあり
自分は何としても通院等乗降介助ができる環境をつくらねばならない
大変だが 自分も69の手習いを始めることにした
今日 運行管理者資格試験のテキストと問題集を買いにいく
wifeには普通自動車二種免許取得をお願いした

ひとり暮らしのいざりの婆さんも万能マジックハンドの婆さんも
介護タクシーで通院等乗降介助できる日を夢みて
老いを生きていくとしよう


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