ジャガイモの生態にはふしぎが詰まっています。その一例を書きましょう。
つい先日,畑仕事をしているときにジャガイモの結実の様子を一通り観察。「よもやあるまい」と思いいつつも,アンデスレッドを調べました。ところが,あったー! この品種については,過去ずっとずっと栽培を繰り返してきています。これまで空中イモは何度かできたものの,実が生ったことは皆無でした。それほど結実しにくい,というか,結実の形質が失われている品種なのです。
「あったー!」といっても,じつに頼りない姿です。花後日が浅いので,ごく小さな実です。小さいのが3個なっています。枯れた花弁がまだ付いている実もあります。
落ちて下の葉に乗っているものもあります。
ただ,これまで他品種で見て来た実とはちがって,かたちがとてもいびつです。ふしぎなかたちをしています。
アンデスレッドは「ソラナム・フレハ」と「アーリーローズ」を交配して育成された品種です。新品種でありながら,どうやら3倍体らしいのです。3倍体は種子をつくりません。というより,できないのです。それは種なしズイカ,ヒガンバナ似通っています。
なのに実が,不完全ながらもできたのです。非常に稀なケースと思われます。
メークインや男爵といったお馴染みの品種でも,めったに結実しません。“めったに”ということは実を結ぶことがありうるということです。わたしは,どちらの品種でもしっかりとした実を見つけました。
「花が咲けば実が生る」。もしならなければ,その植物ゆえの事情があるわけです。自然は多様で,奥深いものです。この一般則に立ち返って花それぞれを見つめてゆきたいですね。