6月に入ってからの話です。
アオクサカメムシの孵化場面を撮り損なって,がっかりしていたところ,再びその卵を発見。ジャガイモの葉裏です。ジャガイモにはテントウムシやカメムシの卵があちこちで見られるので,探しているうちに目に留まったのでした。卵は数十個かたまって産み付けられています。卵一つのサイズは直径0.8mm,高さ1.0mmです。
卵のついた茎をコップに挿して,孵化を待ちました。しかし,ふつうの変化を経ず,やがて全体が黒っぽい感じになってきました。「これは怪しいぞ」と思いつつ,観察を続け,ある日ふと見てみると,なんと卵から何ものかが出てきているのです。びっくり! じっと見ていると,それは寄生コバチに違いないと思われてきました。さらにじーっと見ていると,これは間違いなくタマゴヤドリコバチだと確信めいた感じがしてきました。
ところで,このシーンは孵化ではないということを忘れてはなりません。カメムシの卵の中に産み付けられた卵が,タマゴヤドリコバチのそれであり,卵内で孵化した幼虫が栄養分を吸収して成虫まで育ち,独り立ちして外に現れるという道筋です。したがって,誕生とはいっても,そのすがたがわたしたちの目に触れるという意味での,いわば脱出シーンなのです。
その証拠に,よくよく見ていると,卵内で成虫になった個体が様子が伺えます。
さて,孵化第一号のシーンに巡り合えたのはまったく幸運なことでした。触角の形状からオスとわかります。
出た瞬間はわたしのシャッターチャンス! したがって,この写真はお気に入りの一枚になりました。
生まれ出たオスは身を整えて,メスの誕生を待ちます。
ここからタマゴヤドリコバチの生態が見えてきます。この後の展開は次回に。