『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  139

2012-10-08 07:00:18 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 時は過ぎてゆく風雨はおさまりそうにない、薄暗い風雨の浜に宵が迫りつつあった。
 オロンテスが重そうに口を開いた。
 『パリヌルス隊長にオキテス隊長、夕めしは皆に配ってはありませんが、どのようにしましょうか』
 『あっ、そうだったか。オロンテス、即、手を打とう。六番船には海中を歩いて行けそうか?』
 『ぎりぎりの浅瀬に泊めています。いけるはずです』
 『カイクス、船長、副長たちに、ここへ集まるように伝えてくれ』
 カイクスは、風雨の中を駆け巡って伝言を伝えた。彼らは間をおかずに集まった。
 『おうっ、皆、集まったか。夕めしのことについて指示する、即、かかってくれ。風雨はまだまだおさまらない。夕飯はまだ六番船に乗ったままだ。この風雨だ、浜で夕めしとはいかん。各自が今いる場所で夕めしとする。いいな。君たちは部下を15人くらいづつ引き連れて六番船まで取りにいってくれ。船までは海中を歩いていける、オロンテスの指示に従ってやってくれ』
 『判りました』
 オロンテスを先頭に一同は行動に移った。指示を終えたパリヌルスは、今日を振り返った。
 強い風に押されて、予定したミロス島の停泊地に着くことができた。彼は安堵すると同時にその無事を喜んだ。
 『オキテス、このミロスまで何とか無事に来れた。君に感謝、感謝、大感謝だ。有難う』
 『いやあ~、俺はお前に頼りきりだ。俺こそ、お前に感謝の気持ちでいっぱいだ』
 風が二人の言葉を吹き飛ばす、交わす目線が心を結び付けていた。