『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  145

2012-10-18 08:22:58 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 天候待ちの日は明けた。クリテスの天気に関する予想は的中した。常の日なれば凪ぎの頃合である、吹き返しと思われる西南の風が浜に吹き始めた。
 パリヌルスら三人は、統領と軍団長を囲んで、明早朝の船出について打ち合わせた。
 天候の移り変わりについてクリテスは、見事に言い当てていた。日が暮れるころには、空に星がまたたき、風もおさまり、明日の好天を期待させた。
 パリヌルスはカイクスを呼び寄せた。
 『カイクス、天候の移り変わりは、まさにクリテスの言うとおりだ。全くおそれいった。ところで各船長に伝えてほしい。明早朝、北に輝く荷車(大熊座)を背にして出航する。時は知らせる。そのように彼らに伝えてくれ』
 『判りました。隊長、明日の好天、一日もちますかね』
 『一日はもつ安心しろ。あとは風次第だ、船を押すいい風を願っている。カイクスお前、明日の航海を楽しめ!』
 『有難うございます。では、伝言に行きます』
 カイクスはパリヌルスの許を離れた。
 パリヌルスは、明日の航海の無事を念じた。航海の無事には自信がある。それ故に彼は祈った。彼は祈りの力を信じた。身心中に宿しているもう一人の自分の見えざる手の力を信じた。彼は、ただただ無事にこの海洋を渡りきることだけを念じた。