月の光は先に浜を出た各船を煌々と照らしていた。
オキテスは先行する各船を眺めながら航海の無事を祈らずにはおられなかった。それが彼の自然体であった。うしろをふりかえる、空を見上げる、荷車(大熊座)を視認する。星座の位置がエノスで見るより低い位置に見える彼は首を傾げた。思考はそれより先へは進まない。この時代の概念では、世界は平板であり、盆の上に存在している。地球が球体であることに、まだ気がついていない時代であった。
彼は荷車(大熊座)が進行方向の真っ直ぐうしろにあることを確認した。
東の空が明るくなってきていた。星がひとつ消え、ふたつ消え、彼方に太陽が顔を見せた。西の空には消えやらぬ星がひとつ、ふたつある、雲量はわずかであった。冷気が肌をうつ、まさに航海日和である、漕走は大変だが気にかける天候の心配のないことが安心であった。
木板は、規則正しくリズムを打ち出していた。船速の想定時速は10キロメートルぐらいであろう。彼の船は展帆していた。進行風圧で逆はらみ状態である。彼は考えた。先行く他船に目をやった。三番船も四番船もオロンテスの船も半展帆としている。オキテスはためらうことなく、帆をおろす指示を出した。
『お~いっ!帆を降ろせっ!』
心中を占めている想いは『順風よ吹けっ!』であった。
そのような状況の中で、精神的にも、思考にもゆとりができていた。
オキテスは先行する各船を眺めながら航海の無事を祈らずにはおられなかった。それが彼の自然体であった。うしろをふりかえる、空を見上げる、荷車(大熊座)を視認する。星座の位置がエノスで見るより低い位置に見える彼は首を傾げた。思考はそれより先へは進まない。この時代の概念では、世界は平板であり、盆の上に存在している。地球が球体であることに、まだ気がついていない時代であった。
彼は荷車(大熊座)が進行方向の真っ直ぐうしろにあることを確認した。
東の空が明るくなってきていた。星がひとつ消え、ふたつ消え、彼方に太陽が顔を見せた。西の空には消えやらぬ星がひとつ、ふたつある、雲量はわずかであった。冷気が肌をうつ、まさに航海日和である、漕走は大変だが気にかける天候の心配のないことが安心であった。
木板は、規則正しくリズムを打ち出していた。船速の想定時速は10キロメートルぐらいであろう。彼の船は展帆していた。進行風圧で逆はらみ状態である。彼は考えた。先行く他船に目をやった。三番船も四番船もオロンテスの船も半展帆としている。オキテスはためらうことなく、帆をおろす指示を出した。
『お~いっ!帆を降ろせっ!』
心中を占めている想いは『順風よ吹けっ!』であった。
そのような状況の中で、精神的にも、思考にもゆとりができていた。