『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUJITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  143

2012-10-12 06:03:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『お前、なかなか天気に詳しいな。ここまで説明できるとはたいしたもんだ』
 『え~え、私の父は漁師なのです。クレタのハニア地方では、名の知れた存在なのです。そのようなわけで海の天気については詳しいのです』
 『パリヌルス、どう思う。彼の天気についての話はなかなかだ。彼の言うとおりかもしれん』
 『クリテス、そこでどうだ。明後日の空模様は?風の具合は?そして、一日もつかどうかだ。お前の天気予想を聞きたい』
 四人は暗くなりつつある荒れた天気の空を眺めた。
 『私が先ほども言ったように明日の午後の天気具合が、明後日の天気の鍵となります。明日は、今、吹いている風の吹き返しがあって、午後おそくになって気温が下がり、冷え込んでくるようであれば、明後日の天気は上々のはずです。明日の夜半から空に星がまたたくようであれば、天気は一日、いや、二日はもつ筈です。風も船団にとって、いい風になると思います』
 『判った。オキテス、オロンテス、両人どうだ、明日は天気待ちの日にしよう、それでいいか』
 『そうするより他に手はない、大事をとろう。あわててしくじることは出来ん』
 『よし決まった。明日は天気待ちだ。明後日朝まだき、この浜を出航する。この旨を全員に伝える。カイクス、船長、副長たちを集めてくれ』
 『判りました』
 『クリテス、有難う。君の意見を尊重する。オキテス隊長、オロンテス隊長、これでいいな。決定とする』
 二人はパリヌルスに向かってうなずいた。