『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第６章 クレタ ８

　ギアスとクリテスは海に身を浸した。
　『お～っ、ギアスとクリテスではないか、おはよう』
　統領がユールスの手を引いている。傍らには軍団長のイリオネスもいた。二人は朝のあいさつを返した。ギアスとクリテスの二人は海に身を浸しながら周囲を見回した。いるいる、パリヌルスもいればオキテスもいる、昨夜、同席した面々の顔が見えた。
　朝行事を終えた二人は、今日の行動予定の身支度を終え、出立の準備を整えた。二人は従卒を引き連れて軍団帳のもとへ出向いた。
　『お～、ギアス、クリテスも来たか、近くに寄れ。お前たちにやってもらう要件はパリヌルスと打ち合わせを終えている。ところでクリテス、お前にやってもらう要件の骨子は、この間、話した通りだ。父上によろしく伝えてくれ。頼むぞ。クレタは、何といっても俺たちにとって処女地だからな、よろしく頼む』
　『判りました、じゃ、行ってきます。あっ、統領っ！』
　『おっ、クリテス、出発するのか。父上によろしく伝えてくれ』
　『判りました。帰りは遅くなると思いますが、いい返事を持って帰ります』
　『統領、行ってきます』
　『パリヌルス、頼むぞ』
　『判りました。クリテスにギアス、出発だ』
　パリヌルスとクリテス、ギアスと従卒の四人は、しっかりした足運びで上陸した浜を後にした。一行はクリテスの父が浜頭として仕切っている地区SOUDAの浜に向かって歩を進めた。