『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY           第6章  クレタ  11

2013-01-15 15:21:58 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、その呼びかた、なかなかいい、満足満足』
 三人は話しながら、パリヌルスの手元を見つめた。彼らの視線を感じながらパリヌルスは、慎重のうえに、より慎重に方角地板を操作した。
 『おいっ!そんなに見つめるな。道具に穴があく』 といいながらクリテスのほうを向いて、
 『これを見るのは初めてか』
 『そうです。初めてです、隊長。道具については、カピギアスから説明をいただきました』
 『そうか。この中心の棒影を見るのだ。板に刻み込んである、この線と影の具合で間もなく昼になることがわかるのだ。カピギアスとは何なのだ』
 『あ~、それですか。ギアスどのという呼びかたがだめだということで、考えたギアスどのを呼ぶ呼びかたです』
 『うっう~ん、なかなかいいじゃないか、語呂がいい。いい呼びかただ。いわれ云々は、後から聞く』
 『おう、ギアス、昼が近い。ところでクリテス、親父殿はどうした?』
 『浜小屋に姿が見えないのです。もう、ちょっと待ってください。昼には帰ってくると思います』
 『そうか、そのようなら待とう。そのちょっとだ』
 『ギアス、クリテスの親父さんの姿を見てから昼飯にしよう』
 『判りました』
 入り江の潮騒を聞きながら、話し合っているとき、浜の遠くに五、六人の人影が見えてきた。