『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY     第6章  クレタ  21

2013-01-29 07:41:03 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 四人の話し合いは朝から始まり昼に及んだ。話はあちこちにとびうつり枝葉末節の懸念にまで至った。アヱネアスは、アンキセスとアカテス両人の意見を聞き取り、イリオネスと肯否を話し合いどうにか大要をまとめ上げた。アヱネアスが意図しているイデー山のゼウス神殿を訪ねる件は、話し合いの俎上にはのせなかった。この件はアカテスを除く三人が共有している課題であった。
 一方、オロンテスは多忙を極めていた。パン焼きから食事準備にいたるまで大事小事の指示に大わらわであった。クレタに着くまでの航海で彼にとっては手慣れた日常茶飯となっていた。
 アヱネアスは昼めしの後、イリオネスを呼んで二人きりで午前中に話し合った件の要務実行の段取りを組上げた。話が終わるころになって、パリヌルスに託した案件の成否に触れた。二人は話のまとまりを語るが、否については何も語らない。彼らは講じる手段に否はないと思っているらしい。
 『イリオネス、どう考えている。俺の思いでは、彼らの帰りは陽が沈み、日暮れたころと思っている』
 『統領、彼らは、きっといい便りを持って帰ってきますよ。待っていましょう。パリヌルスにこのことを託した時すでに事は成ったと私は確信していました。私はこれぽっちも心配はしていません』
 イリオネスは右手をさしだして、親指を小指の先に添えて言葉にした。
 『そうか、俺とお前、パリヌルスに厚い信頼をおいているな』
 『そうですとも、信頼すればこそ、その成果が信頼できる。事の成否はそれで決まりと心得ています』