『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第6章  クレタ 12

2013-01-16 08:22:17 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『クリテス、あの人影、親父殿かな』
 『そうだと思います』
 『行って、確かめろ!お前、懐かしいだろう』
 『それはもう、では、行ってきます』
 クリテスは立ち上がり、人影に向かって歩き始めた。残った三人は、この光景を見つめた。
 クリテスは歩いている。歩速が次第に早まっていく、クリテスは走り始めた。人影たちは歩みを止める。親子が三年ぶりに会う、クリテスの胸は張り裂けそうであった。親と子の距離が詰まる。一瞬歩みが止まる。目と目があう、互いが認める、クリテスが飛びついた。抱きとめる父、感無量の一時であった。クリテスは父の体温を感じた。父は言葉短く声をかけた。
 『おいっ!息子!待ったか』
 この光景を見ていた周りの五人が二人を取り巻いた。クリテスはこの五人とも互いに抱き合った。
 パリヌルスはつぶやいた。
 『親子、兄弟、人が胸に抱く懐かしさとはこういったものなのだろうか』
 彼らが感慨にむせぶ空間がそこにあった。
 クリテスを真ん中にして、彼らは歩み近づいてきた。
 パリヌルスは、初対面の心の準備を整えた。彼はクリテスの父親に対して、どの位置に立って話しかけるかを考えた。