『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY     第6章  クレタ  14

2013-01-18 08:28:13 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『昨夜、クリテスのガイドよろしくキドニアの浜に上陸したトロイの民の一人、パリヌルスといいます。なお、ここにいるのは私の部下のギアスとトピタスです。お見知りおきを、、、』 とパリヌルスは返した。
 クレタ島の北面の地方は、先駆している文明により、ギリシアとの交流が盛んである。そのような関係で言葉の問題は懸念に及ばなかったのである。また、この浜に至る道中でクリテスに、彼の父に対する用件を伝えておいたこともあり、初対面における意思の疎通がうまくいったようであった。握手ひとつでこちらの意思が相手に通じ、受入れの意思を表示してくれたことが感じられた。
 『パリヌルス殿、私たちは、これから昼めしにかかります。あなたがた昼めしはまだでしょう、一緒に食べましょうや。この季節、朝明けがおそい、昼めしが朝めしみたいなものです』
 『そうですか、浜頭。それはありがたい。遠慮なく馳走になります。ところで浜頭、私どもの統領であるアヱネアスよりの贈り物です。どうぞ、お受け取りください』
 パリヌルスは、袋から方角時板を取り出して浜頭に手渡した。
 『ほっほう、これはこれは、これは何です?』
 浜頭は手にした方角時板をおしいただいて、
 『これはかたじけない!いただきます』
 『使い方については、のちほど説明いたしましょう』
 『いいでしょう、判りました。昼めしの支度ができたようです。では、皆さんこちらへ』
 浜頭の手配りにそつがなかった。