『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY     第6章  クレタ  18

2013-01-24 08:38:49 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 浜衆が呼びに来るまで少々の間がある、浜頭はパリヌルスたちと雑談を交わした。
 『頭、船の準備ができました』
 『おう、早かったな。ご一同、出かけましょうや』
 『浜頭殿、船を仕立てていただけるとは、もう、何ともかたじけない。ありがとうございます』
 パリヌルスは礼を述べた。クリテスが声をかけてきた。
 『パリヌルス殿、カピギアス、トピタス行きましょう』
 彼らは、、波打ち際に向かい、船上の人となった。
 船は、片舷15人が櫂を操る、この時代としては大型の漁船であった。岸を離れる時の風向きは向かい風であった。北寄りの東風である。。展帆なしの漕走であった。パリヌルスは航海時における方角時板の使い方を説明した。
 『浜頭殿、航海時は時板を使いません。鉄の棒だけです。ひもの端をつまんでぶら下げる、鉄の棒が、ほれ、この通り、きちっと南北を指し示すのです。少々の揺れぐらいでは鉄の棒はぶれません。見てください、今、この船は東へ向かっていることがわかります。この入り江を出ますと船は北へ向かいますね。その時は鉄の棒の指し示す、北の方角に船を向けて進めるといった具合です』
 『パリヌルス殿、よ~くよ~く判りました。そのような便利な道具を頂戴したこと、このうえなくうれしい。感謝感謝です。この道具は俺たち漁師にとってかけがえのない道具です。実にありがたい。厚く礼を言います』
 浜頭は、鉄の棒をうやうやしくおしただいて、ふところに入れた。