『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY           第6章  クレタ  10

2013-01-14 10:24:15 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 クリテスは、中天に差し掛かっている太陽を見上げた。
 『うっう~ん、この分なら昼が近い』 とつぶやきながら一行の三人のいるところへ戻った。
 パリヌルスが背にしている袋から方角時板を取り出して時の見当を計っている。ギアスや従卒にとってはすでに知り尽くしている作業であるがクリテスにとっては初めて目にする道具と作業であった。
 クリテスは、声を潜めてギアスに尋ねた。
 『ギアスどの、パリヌルス隊長が使っている道具は何をする道具なのですか?』
 『なになに、隊長が使っている道具のことか。あの道具はだな、それはそれは便利な道具なのだ。まずひとつはだな、おおまかな時を知る。もうひとつはだな、太陽のない昼、星のない夜に方角を知る道具でもあるのだ。判ったか』
 『へえ~っ!そんなそんな、便利な道具なのですか。そんな道具があるなんて私は初めて知りました』
 『じっくりと、パリヌルス隊長の使っているところを見るといい』
 『判りました』
 『あ~あ、それから言っておくことがある。ギアスどのはやめろ。ギアスでいい。いいな』
 『ギアスどの、ただギアスでは、私にとってはちょっと声をかけにくい。なにかいい呼び方ががありませんか』
 『そうだな、俺はいま舟艇の艇長の任にある。フェニキアでは、船長、艇長のことをカピタンと呼んでいるらしい。カピギアスとでも呼んでくれれば、それでいい』
 『判りました、カピギアス。呼ぶのにカピギアス、いい呼びかたです、それでいきます。カピギアス』