『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  158

2013-12-02 07:56:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 二人は燃えた。再びの絶頂を求めて激しく燃えた。絶頂に至る律動を身体の一箇所に集中しての愛の格闘である。嵐が二人の魂を揺さぶる、風はますます強さを増す、灌木をゆさぶる、抱き合う二人をも揺さぶる。二人の行為は風に同化して荒ぶった。絶頂の時が訪れる、女は、パリヌルスの背中に爪を立てる、胸の小さな突起の一つに噛みつく、行為を展開した体の一部はしとどにぬれていた。パリヌルスは、身を離そうとする、女は離れまいとしがみつく、彼は、しっかと女の体を抱いた。愛の交歓に終焉の時が訪れてきた。互いの体内に歓びの余韻を残して体を離した。
 『お前が私にくれた歓びは素晴らしい、ありがとう。このような歓びをくれたのはお前だけだ。私はお前を大切にする。私の名は、コリダ。私の男はお前だけだ』
 それだけ言って、女は風吹きすさぶ闇の中に身を消した。彼は風の中に立っているのに嵐を忘れていた。一瞬の忘我の時であった。
 パリヌルスは体内に尾を引く歓喜の余韻を感じながら風の中を自分の宿舎に足を向けた。日が暮れ、宵闇が訪れて時間が経っているとは言い難い、暗い小屋の中は、交わされる私語雑談の類でざわついていた。彼は所定の場所へと足探りでたどっていく、腰を下ろし身を横たえた。
 つらつらと今日一日を想いおこす、小屋の外を混ぜ返している風がうるさい、眠りが彼を誘う。闇の中に両手を指し延ばす、手を指し延ばしながら眠りに沈んでいく自分を感じた。風のうるささが遠のいていく、小屋の中のざわつきも遠のいていく、彼は深い眠りに沈んでいった。
 どれくらい眠っただろうか、彼は何かを感じた。なんであるかを探った。夜半は過ぎている、周囲は寝息といびきである、風は、猛りの最中である、彼の察知感覚が起動していた。彼の感覚が強い風が伴う小屋の外壁を打つ雨滴を察知した。雨滴は大粒らしい、浜はどうであろうか、吹きさらしの小島はどうであろうか、それぞれの風景を思い浮かべ、順路をたどりチエックした。あの箇所は、その箇所はと思い浮かべて、この嵐に耐えているであろうかと丹念にチエックした。