『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  171

2013-12-19 08:53:56 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、オキテス、ご苦労。釣果はどうだった?』
 『え~え、釣果は目論見の倍の成果です。夕食に魚がたらふくと言えます』
 『そうか、それは、よかった』
 『このようなこと私が生まれて初めての体験です。チョッピリ恥ずかしいですが、心が躍っています』
 『そうか、重畳であった。お前らの喜びが俺の喜びだ』
 浜に残っていた者たちが寄り集まってくる。彼らのやった釣果を目の当たりにして驚き、浜が湧いた。
 パリヌルスは、各船の副長を呼び集め魚の荷卸し作業の指示を出した。オロンテスはあれこれ指示して夕食の場づくりを始めていた。
 アレテスは、魚おろしを済ませると小島に残している者たちを迎えに戻った。
 ほどなく、アヱネアス以下全員が浜に集まった。焚き火をガンガン燃やし、浜焼きスタイルの夕食が始まった。魚は各自が思い思いに串に刺して焼き、塩を適宜ふりかけて魚に噛みつく、彼らは『旨いっ!』『旨いっ!』連発しながら魚を味わった。まさに原始の頃の食事風景である。
 魚釣りの武勇談がとびだす、それを耳にして胸をときめかす浜の留守番役をした者たち、話に花を咲かせての語りに夕食の場は盛り上がった。
 アレテスは今日の魚釣りのヒーローに祭り上げられていた。オキテスが声をかける。
 『おう、アレテス、お前、あの漁場をどうして知った?』
 『あ~あ、あの漁場の事ですか。それはですね、私の部下に海と魚に詳しい者がいて、一昨日の事ですが、暇を見て釣りに出て知ったのです』
 『そうなのか。ここが漁場だと、どうしてわかったのだろうか、不思議だ。俺には解しがたい。海の中を見ることはむつかしい、海の上は俺の世界であるのにだ、俺にとって海の中は迷界である』
 『彼の話では、魚が群れて泳ぐ道があることと、そこを群れて泳ぎ通る時があるそうです。そのタイミングが合致するときが釣れどきだと言っていました。勘に頼ることが多いそうで、釣れる釣れないは時の運の為せるところだと言っていました』
 『まあ~、そんなものかな。ところでだ、アレテス』
 ここまで言って、オキテスは焼けた串刺しの魚に噛みついた。