『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  165

2013-12-11 08:16:14 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オロンテスの説明を聞き終えた彼らは、一斉に仕掛けづくりに取り掛かった。先ずは糸の準備に始まり、釣り針を糸の端に結びつけるのに苦心惨憺の風景がそこにあった。針の結び付けに比べて、重りの結び付けは思いのほか容易に出来たようであった。彼らはなんとか作業を終えた。仕掛けづくりの間にオロンテスは周りの者たちを引き連れて、エサ取りに出向き、エサを三つの箱に入れて持ってきた。
 『オキテス隊長、これエサです、各船に積んでいってください』
 『お~お、そうか、それはかたじけない。大漁を期待して待っててくれ』
 『そうします。坊主は許しませんよ』
 彼らは釣り人宜しく、船に乗り込んだ。
 『オキテス、出発しよう』
 『おう、行くか』
 『漁場に行く前に小島に寄っていく』
 オキテスは、パリヌルスの意向を理解した。
 『判った、それがいい』
 彼らは、漁場に向かって船出した。
 パリヌルスは、小島でアレテスと打ち合わせた。魚釣りにおもむく趣旨を説明して、アレテスに漁獲目標についての指示をした。彼は持参した釣り針、糸、重りなどを手渡した。
 『そこで俺の頼みだ。漁場への案内人を借りたい』
 アレテスは快くパリヌルスの要請に応じた。
 『判りました』
 各船に一人宛、三人の案内人を乗り込ませた。
 『アレテス、俺たちは、一足先に漁場へ行く。お前も準備ができ次第、漁場に来てくれ』
 『判りました』アレテスは考えた。
 『作業としての釣りか、成果は出たとこ勝負だな、準備して出かけるとするか』
 彼は全員に声をかけた。
 『おいっ!皆、判ったな。俺たちも準備ができ次第、漁場に向かう、いいな』
 『オウッ!』と答えて、彼らも釣りの仕掛けつくりに取り掛かった。彼らにとって仕掛けつくりは手慣れたものであった。仕掛けつくりは『あっ』という間に終わった。
 『おう、一同、聞いてくれ。5人がひとつのチームとなって漁獲目標は30匹だ、いいな、判ったな。先に漁場に行っている者たちに後れを取るな!いいな。さあ~行くぞ!』
 アレテスは檄を一発飛ばした。
 漁場には、先着の三隻が釣糸を垂れている。海は嵐の名残りの余波でざわついている、船は揺れている。各船は、船首と船尾につけた重石碇を沈めている。オキテスは碇の綱に一尋ごとに目印の布きれをつけて、海の深さを知る目安としていた。それによって知った深さで釣糸を沈めていく、彼は慎重に釣れどころを探った。