『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGTIVIVS FROM TROY   第7章  築砦  174

2013-12-24 13:28:48 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスはとび起きた。本人は寝すぎたと思ってのことであった。外はほの暗い黎明の時である。今様時間でいえば午前6時過ぎといったところである。彼は急いで身支度を整え宿舎を飛び出した、浜へと駆け下りていく。彼を行動に駆り立てたのは、何もない、ただ心中の虫の騒ぎであった。昨晩、眠りにつくときの一言である。『お前、何を待っているのだ』のくだりであった。
 そのころ、彼と彼は思念交信感応、いわゆるテレパシーの到達領域にいたのである。
 浜では何も変わったことはは起きていない。何だったのか彼は首を傾げた。張り番の者に尋ねたが何も変わったことは起きていないという答えであった。彼は明けゆく薄闇の海を注意深く見渡した。
 パリヌルスはがっくりした。『予感のはずれか、俺の予知能力も当てにならんな。少々早いが朝行事でもやるか』と独り言ちて、彼は朝の海に身を浸した。島の内陸から吹きおりてくる、浜の朝風で身体を乾かした。
 明るくなってくる、昇る朝陽の第一射が届いた。『おう、今朝の太陽はでかい、見ごたえがある』朝陽のでかさに感動し、畏敬の念が突き上げてくる。まぶたを閉じて頭を垂れた。『今日もいいことがあるだろう』ポジテブな敬信の気持ちで朝陽に対した。心が洗われた。
 浜は朝行事でざわつき始めてきていた。彼は張り番役の者たちをねぎらって宿舎へと向かった。道中でリナウスと顔を合わせた。
 『おはようございます。隊長、何か?どうされたのですか?』
 『おう、おはよう。ちょっと思案していたことがあったのだ。それで早起きしてのことだ。気にかけてくれたのか、ありがとう』
 『では、朝行事に行ってきます』
 この頃、交易商人のテカリオンがキドニアの街の定宿で目を覚ましたところであった。
 『今、彼らはどうしている?』彼は街で、彼らについての情報を集められるかぎり、情報を収集して、彼らがおかれている状況を推し量っていた。
 『彼らは、俺に何を要請してくるか?』『俺は、彼らに何を要請するか?』『今、彼らは、交易に出す品は持っていないはずだ。どっちにしろ、春になってからの話になる。先ず、互いの壮健を確かめることからだ。それにしてもパリヌルスの奴、元気にしているかな』
 テカリオンは、腹心の者、水夫たちとともに朝食を終えて、彼らを訪ねるべく出航の準備を整えた。嵐の去った海はいつもの平穏な海に戻っていた。