『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  159

2013-12-03 07:25:15 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 風が吹きさらす小島の事を気にかけていた。このような嵐にさらされた小島はどうなるか、海についての経験が豊富ではあるが、あのような条件の小島での体験は持ち合わせてはいなかった。いろいろと考えるが、こうであろうに到達しない。海面と陸地の高低差が極めて小さい島なのである。嵐の過ぎた後に状態を確かめるしかほかに方法はない。嵐の猛りは峠であろうと思った。風雨、嵐のおさまるのを待とうと決め、彼は考えることをあきらめた。彼は朝いちに、浜と小島へ出かけると心に決めて再び目を閉じた。眠りは深みには至らない、うつらうつらと眠りが波を打ちながら彼に訪れていた。
 彼は朝を感じた。『起きよう!』飛び起きた、まだ暗い、小屋うちの暗さに目が慣れてくる、リナウスを探した。リナウスを見つけた、近づいて肩をたたき起床を促した。
 『おう、リナウス、起きろ。つきあえ』
 『はい』
 二人は、小屋を後にした。外は朝の気配を漂わせて来ていた。雨は小粒になってきている、風は衰えを見せてはいない。二人は、風の中を浜へと急ぐ、彼らの間には会話はなかった。
 浜についた、張り番の連中が二人を迎える、パリヌルスは声をかけた。
 『おうっ!ご苦労、大変だったろう。まだ、風はおさまらない、変事はないか?』
 『変事は二、三件ありました。しかし、大事には至っていません』
 『そうか、それはよかった』
 言葉をやり取りして、彼は浜を見まわった。
 『リナウス、どうだ、どんな具合だ』
 『異常はないようです。5番、6番船を見てきます』
 『よし頼む』
 波打ち際に立った彼は、小島に目をやった。リナウスが近づいてくる、状況を伝えた。
 『船中にかなりの水があります。荷には異常はありません』
 『よしっ、判った。リナウス、船中の水のかき出しが今日の第一番の作業だな。俺の気がかりは小島の事だ』
 このころには明るくなりかけていた。二人は舟艇のところに向かった。
 陸揚げされた舟艇は、船底を上にして、うつぶせの状態である。その下に張り番の二人が身を横たえていた。