彼は思考を重ねた。
『嵐のあとに魚の喰いがたつのかな。魚の奴らは腹が減っているのかな?』
いずれにしても迷い迷いながらの釣りである。
オキテスは4番船の船尾にいた。彼は『海の中、そこは迷界だな』と想った。そして、できるだけ早い時点で彼らに会いたいものだと思いながら模索の作業を続けた。
今、判っていることは海の深さである。海の深さは、彼らが作った釣り仕掛けの糸の長さであれば充分に対応できた。その点については安心した。『ここはじっくり構えていこう。急がないことだ、とにかく集中して当たりを探ろう』彼は、釣糸を下ろしたり、たぐったりと仕掛けに動きを与えて当たりを探った。『釣りに技がいるのかな?』彼は考えた。俺はあせっている、彼は、それを否定したかった。『そうか、ここは一時、結果を求める意思を捨てるべき局面かもしれない』彼は、結果を求める境地から脱しようと努めた。
漁場にアレテスの2番船が着いた。四隻の船がこの海域の100メートル四方くらいの中で釣糸を垂れていた。
散在している船でポツリポツリと声があがっている、出会い頭の偶然の釣果であろうと思われた。考えれば、この海域が魚の通り道であり、魚たちに、ここにエサありと察してほしいと考えた。それを思ったときに彼は、少々の安心感を覚えた。海中という迷界に対応する心が定まった。
『心配することはない。釣れるときには魚は釣れる』
彼はエノスのころの釣りを思い出していた。心的に余裕が出てきていた。
時は、まだ昼前であるはずだ。このあたりが太陽の位置であろうと空を仰いだ。見るところ空には暗雲がない、雨の心配はせずともいい、やがてには、薄陽も射してくるだろう。風はおさまってきている、海上を渡る風はいつもと変わりない風となりつつあった。
洋上での作業をする不安が少しづつだが減ってきている。今頃になってようやく作業に対する集中度が増していく自分に気がついた。
『嵐のあとに魚の喰いがたつのかな。魚の奴らは腹が減っているのかな?』
いずれにしても迷い迷いながらの釣りである。
オキテスは4番船の船尾にいた。彼は『海の中、そこは迷界だな』と想った。そして、できるだけ早い時点で彼らに会いたいものだと思いながら模索の作業を続けた。
今、判っていることは海の深さである。海の深さは、彼らが作った釣り仕掛けの糸の長さであれば充分に対応できた。その点については安心した。『ここはじっくり構えていこう。急がないことだ、とにかく集中して当たりを探ろう』彼は、釣糸を下ろしたり、たぐったりと仕掛けに動きを与えて当たりを探った。『釣りに技がいるのかな?』彼は考えた。俺はあせっている、彼は、それを否定したかった。『そうか、ここは一時、結果を求める意思を捨てるべき局面かもしれない』彼は、結果を求める境地から脱しようと努めた。
漁場にアレテスの2番船が着いた。四隻の船がこの海域の100メートル四方くらいの中で釣糸を垂れていた。
散在している船でポツリポツリと声があがっている、出会い頭の偶然の釣果であろうと思われた。考えれば、この海域が魚の通り道であり、魚たちに、ここにエサありと察してほしいと考えた。それを思ったときに彼は、少々の安心感を覚えた。海中という迷界に対応する心が定まった。
『心配することはない。釣れるときには魚は釣れる』
彼はエノスのころの釣りを思い出していた。心的に余裕が出てきていた。
時は、まだ昼前であるはずだ。このあたりが太陽の位置であろうと空を仰いだ。見るところ空には暗雲がない、雨の心配はせずともいい、やがてには、薄陽も射してくるだろう。風はおさまってきている、海上を渡る風はいつもと変わりない風となりつつあった。
洋上での作業をする不安が少しづつだが減ってきている。今頃になってようやく作業に対する集中度が増していく自分に気がついた。