『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  160

2013-12-04 07:29:13 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らは、二人に気付いたようだ。舟艇の下から這い出てきて声をかけてきた。
 『あっ、隊長。ギアス隊長はまだです』
 『そうか、ギアス隊長を呼びに行ってくれ』
 二人のうちの一人が小走りに駆けだした。駆けていったと思ったら間をおかずに戻ってきた。
 『おっ、どうした?』
 『ギアス隊長が間もなくこちらに来ます』
 ギアスが姿を見せた。
 『おうっ、ギアス、おはよう。お前早かったな』
 『おはようございます。隊長こそ早いですね』
 『よし、ギアス。俺は寝ずに小島の事を気にしている。すぐ小島に行きたい、準備を頼む』
 『判りました。直ちに!』
 彼は張り番の一人を呼んで漕ぎかたたちを呼びにむかわせた。パリヌルスはリナウスに声をかけた。
 『おい、リナウス、シャキッとしよう』
 二人は着衣を身に着けたまま海に身を浸した。
 雨は止んでいる、風は衰えをみせてはいるものの強く吹きつけて来る。二人はさっぱりした風情で海から上がってきた。
 『なあ~、リナウス、不思議だと思わないか。この季節だというのに海の水が生ぬるい』
 リナウスはうなずいた。
 『リナウス、俺は小島に行く。浜のことよろしく頼む』
 彼は言い終わり、目線を舟艇に向けた。すでに舟艇は海に浮かんでいた。ギアスが来る。
 『隊長、もうよろしいです。乗ってください。あと三人の漕ぎかたが来たら小島に向かいます』
 『そうか、行こう』
 彼は艇に乗り腰を下ろした、よせ来る波にあおられて立ってはいられない。三人がかけてきて漕ぎ座につく、ギアスの出艇の指示に櫂が飛沫をあげ艇は浜を離れた。
 深くはない海ではあるが、荒く波は踊った。ギアスと漕ぎかたは波に翻弄される舟艇を操った。平常時であれば、今様時間で10分くらいで小島につくであろうに、その2倍以上の時間を費やして、やっとといった感じで小島の東の浜に着いた。
 パリヌルスは、着島するや即時に浜の全体を眺め廻した。彼には、小島の地勢を熟知する必要があったのである。