『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  177

2013-12-27 08:04:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 二人は、アヱネアスの宿舎へと足を向けた。ハシケに積んできたテカリオンの手土産は数人の者に持たせた。宿舎の前庭にはアヱネアス、イリオネス、オキテス、オロンテスがいる、彼らは、昨日の大漁を話題にして話し合っていた。彼らが二人に気づく、
 『おう、パリヌルス、おはよう』
 四人が一斉に声をかけてくる。
 『おう、客人か。テカリオンじゃないか、元気にしていたか』
 アヱネアスが声をかけた。
 『あっ!統領。おはようございます。お元気ですね、何よりです。皆さんもお揃いで元気な様子、大安心です。私も潮風に吹かれて元気そのものです』
 彼はここで言葉を切り、イリオネスに話しかけた。
 『軍団長殿。些少で恥ずかしいですが、これをご受納ください』
 彼は持参した品々を差し出した。
 『おう、ありがとう!喜んでいただく。いつもながら気配りしてくれてありがとう。お前に何を礼しようかと迷うじゃないか』
 『そんな風に言われると痛み入りますな。礼には及びません、礼はたっぷりといただいております。こちらさまとの交易で充分にいただいております』
 『こいつ!はっきり言うな。軍団長、テカリオンとの取引では、気を許してはいかんぞ』
 『判りました』
 『いやいや、まいりましたな。軍団長との掛け合いはとても厳しいですからな、、、。しかし、この前の取引で頂いた『方角時板』あれは大変な代物です。あれでいい商いができました。ありがとうございました』
 テカリオンの受け答えは堂にいったものであった。
 『皆さんの話し合いは何でしょう?私も入っていいようでしたら入れてください』
 『お~お、テカリオン、お前は商売人だな、こんな話の中に入ってどうするのだ。久しぶりにテカリオンが来た、何を馳走しようかと相談していたところだ』
 『本当にですか?『まさか』ですな』と言って首を傾げた。
 『いやね、私たちが生きていくうえで『さか』があります。その『さか』が三つあります。ひとつ目の『さか』は『のぼりざか』ふたつ目は『くだりざか』みっつ目が、今、言いました『まさか』です。今の話、その『まさか』の幸運ですな、ありがとうございます。喜んで馳走になります』
 これを聞いた一同から笑い声があがった。笑い声が静まると思いきや一同が腹を抱えての大笑いとなった。
 『いやな、テカリオン、その『まさか』が昨日、起きたのだよ。お前、その話を聞くか』
 『聞きますとも、聞きますとも。いい話は幸運を呼び寄せます。お願いします』
 『判った。オキテス、話してやってくれ』